3年分の「一生に一度」 小6のみが務める「囃子手」 コロナ禍で逃した子の声響け 19日から秩父川瀬祭

囃子手の衣装を試着した、右から山中泰駕さんと凰駕さん、父親の歩さん=5日午後9時ごろ、秩父市の東町公会堂

 19、20日に埼玉県秩父市で開催される秩父川瀬祭で、子どもたちの「ホーリャイ」の掛け声が3年ぶりに市内に響き渡る。屋台や笠鉾(かさぼこ)の上で声を張り上げ、曳(ひ)き子を鼓舞する「囃子手(はやして)」は、子どもたちの憧れの役。コロナ禍で昨年、一昨年と山車の巡行が中止になり、その大役を逃してしまった子どもたちは少なくない。囃子手を務められるのは小学6年生だけ。中止期間中の6年生には、二度と役が回ってこない。東町では19日夜の巡行で、中学1、2年生も屋台に上がり、囃子手として会場を盛り上げる。

 秩父路に夏本番を告げる川瀬祭は、市内計8町会の子どもたちが太鼓や笛、拍子木などをにぎやかに打ち囃しながら、豪華絢爛(けんらん)な山車を曳き回す、秩父神社の祭礼。

 太鼓ならしや拍子木打ちは小学生から大人まで幅広い年代が携わるが、祭りの花形とも言われている囃子手の役は、選ばれた子どもが担う。東町では毎年、小学6年生が務め、扇子やちょうちんを片手に、街中で曳き手たちを囃し立てる。

 東町の今年の囃子手メンバーは計11人(男6人、女5人)。小学6年生の他、中学1、2年生3人も加わる。「昨年、一昨年に囃子手を経験できなかった子どもたちに、晴れ舞台をつくろう」と、町会役員が今回の特別枠を設けた。

 5日に囃子手の衣装合わせが行われ、参加した中学2年の山中泰駕(たいが)さん(13)と、小学6年の凰駕(おうが)さん(12)兄弟は、囃子手だけが着用できる紅白のじゅばんに初めて袖を通した。父親の歩さん(37)は「子どもと祭りに参加するのが長年の夢だった。泰駕に特別な場をつくってくれた町会の方たちに感謝したい」としみじみ語った。

 歩さんは自身が小6の時に囃子手を経験。「自分と同じ役を、子どもにも味わってもらいたい」と以前から強く思っていた。「大通りで山車同士が擦れ違う瞬間が一番の醍醐味(だいごみ)。他町会の囃子手と目が合うたびに対抗意識が芽生え、気持ちが一気に高まる」と、歩さんは囃子手の魅力を2人に伝えた。

 小1の時から拍子木打ちとして祭りに参加している、長男の泰駕さんは「ずっと6年になるのを待ち望んでいたが、2年前に祭りが中止になり、悔しい思いをした。今回、ようやく囃子手の役が回ってきたので、やるからには全力を尽くす」と気を引き締めた。

 次男の凰駕さんは「兄の代が中止になり、自分の代も囃子手ができないのではないかと心配だった。学校の仲間同士で、一緒に盛り上げられるのが楽しみ」と話していた。

 19、20日の祭り本番を前に、市内の祭り参加者たちはPCRや抗原検査を行うなど、感染症対策を万全にし、山車巡行の準備を進めている。

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