値上げ続きのいまこそ知りたい、インフレに強い資産、弱い資産とは?

ガソリン代や電気代、スーパーの食料品や大手外食チェーンのメニューなど、価格上昇のニュースが絶えません。

全世界的に起こっている物価の上昇(インフレ)は、すでに私たちの生活に影響を及ぼしています。緩やかなインフレは経済の成長に必要な要素とはいっても、ここ最近の急激な物価上昇には、将来に対する不安を感じる方も少なくないでしょう。

そこで今回は、インフレ時に自分の資産を守るための考え方や具体的な方法を、いくつか紹介していきます。


どのくらいの影響? 数字で見る物価上昇

物価の上昇を表す数字として、総務省が発表している「消費者物価指数」があります。現在、発表をされている最新版の数字では、2022年4月2.5%(前年同月比)です。急激なインフレが懸念されている米国においては、2022年4月 8.3%/2022年5月8.6%(前年同月比)という数値になっています。

この中で、一番物価が上がっている米国を例にとると、去年の4月に100万円で購入ができたモノは、今年108.3万円(+8.3万円)出さないと買えないことを表しています。

諸外国に比べ、日本はまだまだ低いと感じるかも知れませんが、仮にいまのペースで物価が上昇し続けた場合、10年後には、いま100万円の価値のあるモノやサービスが128万円に上がっているため、28万円分値上がりすることになります。

いま保有しているお金が100万円あったとしても、10年後には28万円分足りなくなる。つまり、物価が上昇する=お金の価値が目減りしていくこと、と同じ意味になります。

直近10年 日本のインフレ率の推移

ただし、この消費者物価指数は、短期的な数値では確かに上昇し、インフレに傾いていますが、ここ10年のインフレ率を見ると以下の通り。

参照:IMF(国際通貨基金)世界経済見通しデータベース

日本は長引くデフレから脱却できていない、といわれているゆえんが、このような数字からも分かります。

経済が拡大していき、私たちの給料が上がって豊かな方向に進むためには、「緩やかなインフレ」が望ましいといわれますが、急激なインフレも経済に混乱を生じさせるため、日本政府はインフレ目標を2%と定めています。

デフレ不況がこのまま続くことを願う人は少ないと思いますが、仮にインフレが継続する世界がやってくるなら、前項の数字のように、「お金の価値」は目減りしていきます。

インフレに転じた後の私たちなら、今よりも収入が増え、豊かな未来を過ごしている可能性はありますが、重要なのはインフレに転じる前、つまり「今現在、保有している資産」が、インフレ後の未来において「価値が下がっていく」という部分です。

この「お金の価値」が減少していくための対策を、無理なく継続的に行えるならば、それは必要な選択といえるのではないでしょうか。

インフレの具体的な対策

インフレに対する対策とは、直近1年や3年のためというよりも、10年~20年という、ある程度の長期的な視点で捉えることで意味を成します。

その時、インフレ対策のコンセプトを定めるならば、「預貯金(円)以外の資産を持って、分散をはかること」といえるでしょう。

つまり、日本で生じるインフレに「ほぼ影響を受けないもの」であったり、「逆の動きをするもの」に資産の一部を移転しておく方法です。

まずは代表的なインフレに強い資産、弱い資産は以下の通りです。

先に、インフレに弱い資産についてお話します。

そもそも物価の上昇率が仮に2%とするならば、保有している資産も価値が上昇しない限りは、単純に2%目減りしていく計算になります。

現金・預金の金利は現在0.001%なので、「ふえる」ことは期待せず、「すぐに使えること」が保有メリットになります。債券は、リスクが少なく安定して運用ができる商品ですが、2%を超える利率は考え難いでしょう。

保険は、例えば終身保険や学資保険など、貯蓄性のある保険をここでは指しますが、生命保険会社が設定する「予定利率」は、「債券」の価格に準ずるため、円建てである限りは上記と同様です。年金も、物価上昇率以上に増えることは考えにくく、「繰下げ受給」を選択することで、もらう額を増やすことくらいです。

つまり、上記の「インフレに弱い資産」から、ごく一部でも、「インフレに強い資産」に変えておくことが対策の第一歩になります。次は、インフレに強い資産を見ていきましょう。

株式・投資信託

インフレが持続した場合、モノやサービスの価格が上昇していくので、企業収益は上がっていきます。それにともない、株価は上昇していきます。iDeCoやNISAといった制度を活用しながら長期的に運用をすることは、一番オーソドックスなインフレへの対抗といえます。

この場合、運用によって「莫大な利益を上げる」よりも、「お金の価値が目減りをする分を防ぐ」という「守りの運用」を意識すると良いでしょう。

つまり物価上昇率が2%で継続するのであれば、3%~4%程度の収益率を望めるポートフォリオを組んでみてはいかがでしょうか。

外貨商品

2022年6月現在、ドル円の為替レートは135円~136円と、およそ24年振りの円安となっています。インフレ下においては、円安に進みやすい傾向があります。

つまり、「日本円」よりも、「米ドル」や「ユーロ」などの外貨の方が、価値が高くなります。

よって、外貨預金や外貨建て保険、外貨建てMMFといったものに、日本円から少しでも資産を分けておくと、インフレリスクを分散することができます。

金などの現物資産

現物資産の代表的なものは「金(ゴールド)」です。インフレとは、「お金の価値」と「物やサービスの価値」が乖離することを表しますが、「金(ゴールド)」は金(ゴールド)の価値の変動なので、インフレの影響はほとんど受けません。

また、この度のウクライナ侵攻など、世界経済は地政学的リスクを孕んでいますが、「有事の金」と言われるように、リスクヘッジに適した財産として古くから認知されています。

「純金積み立て」などでコツコツ貯めたり、一般NISAなどで、金(ゴールド)の指標に連動する投資信託を活用したりするのも有効です。

不動産

インフレが起これば、「物やサービス」の価格は上昇していきますが、それは不動産価格にも影響します。賃料や建物の価値が上昇するからです。

それは「不動産価値の上昇」と同じですから、資産の一部を「不動産」に預けていることはインフレに対抗できる、といえます。

ただし、自身でアパートやマンションを所有するのは簡単なことではありませんので、これも上記同様に、iDeCoやNISAの制度を用いて、「REIT(リート)」と呼ばれる「不動産投資信託」を活用してみるのも有効です。

未来のために今こそ対策するべき

景気が良くなる=給料が上がる、とするならば、インフレは歓迎するべき状況です。

あくまで、「今現在、保有している資産」がインフレの影響を受け過ぎないように、決して無理のない範囲で、「現金・預金」以外の資産に分散させる意義を解説しました。

現在、いまだコロナ禍の影響を引きずる世の中で、ウクライナ侵攻や円安ショックなど、嵐のような経済環境が続いていますが、自分にできることを検討し、対策を講じることは、「嵐の中」でも考えなければ未来は変わりません。

そのための検討材料として、少しでも参考になれば幸いです。

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