米兵によるタクシー強盗致傷「SACO見舞金」認めず 那覇地裁が原告の訴え退ける

 2008年に沖縄市で発生した公務外の米兵2人によるタクシー強盗致傷事件で、被害者の家族が別の訴訟で確定した判決を受けて、遅延損害金を含めた損害賠償金約2500万円の支払いなどを国に求めた訴訟の判決で、那覇地裁は14日、訴えを退けた。米側が支払った見舞金が裁判所で確定した賠償額に満たなければ、日本政府が差額を穴埋めする「SACO見舞金」制度が争点となっていた。原告側によると、SACO見舞金に関する司法判断は初めて。

 タクシー運転手の男性は事件の後遺症に悩まされるなどし、12年に亡くなった。

 遺族は加害米兵2人に損害賠償を求めて提訴し、那覇地裁沖縄支部は18年7月、遅延損害金を含めた約2642万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 判決確定後、遺族はSACO見舞金の支給を求めたが、沖縄防衛局は遅延損害金の支払いを拒み、受諾書を出すよう要求。受諾書には「今後いかなる申し立てもしないことを約束する」などと書かれていたため、遺族側は提出を拒否した。

 福渡裕貴判長は14日の判決理由で、SACO見舞金の支給制度は閣議決定を根拠としており、法令ではないと指摘。沖縄防衛局が見舞金の額や支給を決定することは、行政処分ではなく、訴訟の対象とならないとした。

 さらに、SACO見舞金の支給は「国と被害者との間で締結された見舞金の贈与契約」だと判示。原告が受諾書を出さない限り、見舞金の契約が合意したとはならないとし「国は支給する法律上の義務を負わない」として退けた。

 原告側代理人の新垣勉弁護士は「SACO見舞金は、被害者の救済のための制度。制度の本質を理解していない判決だ」と批判した。

 沖縄防衛局は「いずれも国の主張が認められたものと受け止める」と述べた。

© 株式会社琉球新報社