四ケ町アーケードの「マック」が撤退!? 佐世保で広まった“誤解”…なぜ

若者らでにぎわうマクドナルド四ケ町店(奥)。近隣には佐世保バーガー店もある=佐世保市

 このところ、佐世保市中心部でこんな心配の声をちらほら聞く。「四ケ町アーケードのマックは撤退するの?」-。ただ、日本マクドナルド(東京)に取材すると「その予定はない」ときっぱり。なぜ、「ガセネタ」が出回ったのか。原因を調べていく過程で、地元で長年親しまれてきた店舗の歴史のほか、ご当地グルメ「佐世保バーガー」との“共存”も見えてきた。

◆青春の場所

 「マックの四ケ町店がなくなるらしい…」。同市で生まれ育った会社員男性(42)はため息をついた。中学生のころに友人と初めて外食した思い出を語り、「青春時代の大切な場所。寂しくなる」とつぶやいた。撤退のうわさはインターネット上にも複数あった。
 ただ、マクドナルドに聞くと「移転や閉店の予定はない」と断言。どうやら、今月下旬に近隣の相生町で新店舗がオープンするため、四ケ町店がなくなるとの「誤解」が広がったようだ。2月末にはアーケードで半世紀近く営業したイオン九州の店舗が閉店。「次はマックか」とうわさに拍車がかかった可能性もある。

◆県内で最古

 ちなみに、マクドナルドの県内1号店は、1981年に開業した長崎市の長崎銅座町店。四ケ町店は3号店で85年に誕生した。その後、1、2号店は閉店。四ケ町店が最も古い店舗となった。
 近くには米軍基地があり、外国人の利用者が多い店舗ならではの特色もある。レジではドル払いが可能。入り口には為替相場が掲げられ、毎週月曜日に更新している。こうした店舗は全国に7カ所のみという。
 アーケードの中心部に位置し、休日は若者らでごったがえす。させぼ四ケ町商店街協同組合の川尻章稔理事長(65)は「にぎわいづくりに貢献している」と感謝する。

◆“ライバル”

 一方、地元には米海軍関係者から伝わったとされる佐世保バーガーもある。アーケードや周辺にはバーガー店が点在するが、同業者で競争はないのだろうか。
 佐世保市上京町にある老舗「ビッグマン」の的場一誠店長(33)は「ライバル意識は全くない。先日、私もマックを食べましたよ」と笑顔で語る。
 新鮮な食材と味で勝負する佐世保バーガーは、2000年代に本格的なブランド化が進み、観光客や食通の間で人気を呼んだ。一方、マクドナルドはファストフードとして定着しており、客層のすみ分けができているという。同市在住でマックを時々利用する米国人のカルロー・クリスさん(36)も「(バーガーを通じ)市民といいコミュニケーションができている。佐世保バーガーもおいしいですよ」と白い歯をこぼす。
 1889年の旧海軍鎮守府開庁を機に、全国の人々を受け入れながら発展した佐世保。戦後は米軍基地が置かれ、国際色豊かな都市となった。多様性を大切にしながら成長した街の心意気はソウルフードにも現れている。


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