「直線で勝手に跳ねて怖かった」「真逆のキャラに」「予兆なく、突然止まった」【SF Mix Voices 第6戦予選】

 全日本スーパーフォーミュラ選手権は7月16日、静岡県の富士スピードウェイで第6戦の予選が行われた。雨に見舞われて30分の計時予選へとフォーマットが変更、さらに赤旗が3回導入される波乱の展開となるなか、雨量の少ないセッション序盤でいかにタイムをマークするかが、上位進出のカギとなった。

 予選後、全ドライバーが参加して行われる取材セッション“ミックスゾーン”から、雨の予選に挑んだドライバーたちの声をお届けする。

■小林可夢偉(KCMG) 予選ノータイム(赤旗原因車両)
 予選セッション序盤、各車がアタックしているタイミングで、突如GRスープラコーナーに止まっている映像が映し出された小林可夢偉。リプレイ映像により、単独でのクラッシュであることが明らかとなったが、何があったのか。

「何が起こったか分からない。グリップがなくて、(タイヤを)温めよう、温めようとしていたのですが、まだアタックもしていないうちに壁に張り付いたので……」

「朝はウォームアップ早かったんですが、なぜか真逆(のキャラクター)になってしまって。(クラッシュは)アタックしてない周です。しようと思ったんですが、まだダメだなっていう感じだったので」

 可夢偉によれば、朝のフリー走行ではトラブルに見舞われ、走り込めていない状況で予選を迎えていたという。

「朝もダメでしたね。走り出しちょっとタービンのトラブルがあって、直線で240km/hしか出なかった。それで帰ってきてピットで直して、次に出ていったらもう大雨。だからあまりよく分からないまま終わってしまっていたんです」

■宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S) 予選ノータイム(赤旗原因車両)
 可夢偉のストップによる赤旗提示時には、1分37秒789という、その時点での7番手タイムをマークしていた宮田莉朋。再開後、コースへと戻っていくが、ダンロップコーナーを立ち上がったところでスローダウン。13コーナー外側へマシンを停めたが、これが2度目の赤旗原因となってしまった。

「(ダンロップコーナー立ち上がりで)アクセル踏んだらもう反応しなくなってしまって、エンジンも止まってしまいました。予兆とか何もなく、突然ですね」と宮田。

 そこまでの予選セッションでは早めにピットに入り、タイヤを交換して出ていく様子が見られたが、「あの状況だと(計測)1周目か2周目しかタイムが出ない状況だったことと、雨が結構降ってくるという予報だったので、環境がいい状況でアタックするために早めにタイヤ替えて行っていました」という。

「36秒台とかは全然見えませんでした。正直、雨の課題が残った状態で終わってしまった印象ですね。朝は大雨で練習ができなかったので……」

「予選で新品タイヤたくさん履いたなかで、全然グリップが違うタイヤがあったりもしたので、(課題が)タイヤなのかクルマなのかも分からないという感じです」

 ドライに関しては、2回目の富士ということもあり、一定程度の自信はあるようだ。第2戦では、表彰台にも登壇している。

「富士は(今年)2回目ということで開幕戦のデータもありますし……ただこの季節のレースってSF19になってからないので、ちょっと参考になるものが難しいのですが、ただ僕は前回は予選も良かったし決勝も表彰上がってるので、そういった部分をしっかり自信に変えていきたいなと思います」

2022スーパーフォーミュラ第6戦富士 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)

■平川亮(carenex TEAM IMPUL) 予選11番手
 ランキング2位で迎えた富士の予選、平川亮は6番手タイムでセッションを終えていたが、走路外走行があったとして当該ラップのタイムが抹消、11番手へとポジションを下げた。

「計測1周目に行こうと思ったのですが、(前の関口雄飛と)間を開けきれずに……そのあと遅れてピットアウトしてくる車がその次の計測中に出てきてしまって、アタックをちょっと控えるような感じでタイヤを温存していってたら、赤旗になってしまって。でも判断としてはちゃんとしたので良かったんですけどね……」

 つまり、結果的に削除されたベストタイムの周は「アタックしてない」と平川。

「トップと1.5秒くらい違うじゃないですか。だから別になんか、忘れてたというか、振り返ってみたら『あぁ、(走路外走行)してたな』というくらいで。再開後も、そのタイムを更新しようというよりは、ちゃんとタイムを出そうと頑張ったのですが、常に雨がふっていて、しょうがなかったですね」

 SUGOに引き続き中団・後方からのスタートとなるが、「第1・2戦はいいレースができてるのでそのとき以上の走りができればと思ってます」と平川。

「SUGOよりはポジションいいので。まぁでもちょっと、落胆はしましたけどね……しょうがないです」

■サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING) 予選7番手
 前戦で優勝を飾り、タイトル争いでも野尻智紀(TEAM MUGEN)、平川を追う存在となったサッシャ・フェネストラズ。平川が前述のようにタイム抹消でグリッド位置を下げるなか、フェネストラズは7番手から決勝をスタートする。

「朝のプラクティスの最初は雨のなかでドライブできたけど、残念ながらはそれはフルウエットではなかった。だから僕らは、激しい雨のなかでどいうクルマになるかは、分かっていなかったんだ。だから、僕らは単純に予選に向けていいクルマを手にできていなかったと思う」とフェネストラズは一日の流れを振り返る。

「(予選では)全体的にグリップがなかったんだ。限界まで攻めてドライブしても、マシンは総合的には速くなかった。残念ながら可夢偉さんのストップで赤旗となってしまい、その時僕らはいいラップには突入していた。けど、関口さんのタイムは見えなかった。トップ5か、トップ3といったところだったと思う」

「僕らはウエットでのマシンのセットアップを改善する必要があるね。これはケンタ(山下健太)もそうで、僕らは全体的にウエットでのいいクルマを手にできていない」

 7番手からのスタートとなるが、もしドライコンディションとなれば、第1戦でも表彰台に登っている富士ということで、好結果が期待できそうだという。

「ドライでクルマがいいのは分かってるんだ。富士ではいつもスリップストリームを使ったいいレースができるし、7番手スタートはそれほど悪くない。明日、どうなるか見てみよう」

■笹原右京(TEAM MUGEN) 予選13番手
 予選開始直後、コースに出ていった笹原右京は、困惑したという。

「一体何が起きたかさっぱり分からなくて。本当に出ていった瞬間から、何か違うキャラクターになってしまったなみたいな感じで。タイヤが終始温まらない感じでした」

「朝(プラクティス)は逆というか、すごい分かりやすかったのですが……。もちろん、コンディションは大きく変わってるとはいえ、すぐに限界を迎えてしまった感じで、スピードをまったく出せず、タイヤも機能させられずという感じでした。チームと話し合って、いくつかちょっと怪しそうなところ確認、という感じです」

 笹原は前戦SUGOの走り出しでも謎の失速に見舞われていたが、今回はそれとは関連がなさそうな現象だという。

「SUGOは本当に細かなものが積み重なってのものだというのが、現地でも分析して分かったんですが、今回は何かが壊れたくらいの雰囲気になってしまい、自分でも整理がついていないです。ストレートでも勝手に跳ねちゃったりとかしていて、すごく怖かったです」

2022スーパーフォーミュラ第6戦富士 笹原右京(TEAM MUGEN)

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