ガルシアさん天へ

 小柄な体に柔和な笑み。流ちょうとは言えぬ日本語が、かえって親しみを抱かせた。雰囲気を例えるなら、故郷スペインのお日さまのような明るさ▲長崎市の元日本二十六聖人記念館長で、修道士のアントニオ・ガルシアさんが7日、93歳で帰天した。「原爆で傷ついた人のために働きたい」と1950年に来日。広島、東京、長崎などの修道院で働き、祈りと奉仕に人生をささげた▲後にローマ教皇フランシスコとなるベルゴリオ神父との出会いは87年。修道会イエズス会の仲間であり、東京を訪れた神父の世話をした。それをきっかけに文通が続き「特別な友」と認め合う間柄になった▲2014年、19年ぶりに長崎へ赴任すると「原爆の悲惨さを教えなければ」と、長崎で被爆した子どもの写真とされる「焼き場に立つ少年」を教皇に送った。この写真が教皇に長崎訪問を最終的に決断させた▲19年11月に教皇来崎が実現した際には、抱き合って旧交を温める二人の姿があった。ガルシアさんの葬儀ミサでは「(死去に)心が揺り動かされます。彼が天国から私たちを見守りますように」という教皇直筆の追悼文が展示された▲もし人それぞれに天から授かった役割があるとすれば、ガルシアさんのそれは、教皇と長崎の結び付きを強くすることだったのだろう。(潤)

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