「いつも誰でも学べる環境を」 夜間中学シンポ 長崎県内も設置検討

夜間中学設置に向けて意見を交わした(右から)江口さん、入江さん、永石さん=県庁

 学習機会を逃した人の学び直しや、外国人の日本語教育の場となる公立夜間中学の意義を考えるシンポジウムが16、17日、長崎県内であった。夜間中学は県内にはなく、数年以内の設置が検討されている。東京で30年近く夜間中教諭を務める入江陽子氏(佐世保市出身)は基調講演で「学びたいと思うのは人間の本質。いつでも、誰でも、どこからでも学べる環境がある社会になれば」と願った。

 夜間中学は戦後の混乱期に義務教育を受けられなかった高齢者や、不登校経験者、日本語が苦手な在日外国人らが対象。4月現在で15都道府県に40校があり、国は2026年までに全ての都道府県と政令市で設置を目指す。
 シンポは県民の理解を深めようと、県教委が16日に佐世保市、17日に長崎市で初めて開催。入江氏は17日の講演で、夜間中学には年代や国籍、学習程度などが異なる人が集い、生徒同士で教え合う関係も生まれると紹介。「さまざまな背景を持った人の集団。学びの化学反応が起き、互いの学びが深まっている」と語った。
 専門家らのパネルディスカッションもあり、和歌山信愛大教育学部の江口怜助教は、高齢者が学び直す意義について「実利的に生活が大きく変わらなくても、子どもの時に学べなかったつらい経験を夜間中で明かし、同じ境遇の人と出会えることで、自分の人生を肯定できるようになる」と説明した。
 南島原市で不登校者や家族の支援などに取り組む団体「居場所コミュニティこころ」の永石麻衣子代表は、県内で夜間中を設置する場所について、半島や離島など交通が不便な場所を考慮して「公民館や廃校を利用した移動夜間中学もあれば」と提案した。
 16日は佐世保会場で「外国人の学び」に焦点を当てて議論。江口助教は、県内に夜間中ができた場合には「どんな外国人ネットワークが存在しているかや、どこに働きかけるといいかを意識して、生徒になってくれる人にアプローチすることが非常に大切」と述べた。


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