誰かの希望になれたら

 その出会いは4年前だった。左脚を切断して入院していた青年の病室に、今やパラアスリートの顔とも言える車いすバスケットボール日本代表、鳥海連志選手(パラ神奈川SC、県立大崎高出身)が訪ねてきた▲青年は当時、バスケット部に所属していた高校3年生。春先に骨肉腫と診断され、自身最後の県高総体のコートに立てなかった。初めて「死」も意識した。親を悲しませたくなくて気丈に振る舞ったが、病室で1人になると、ずっと泣いていた▲突然、目の前に車いすバスケット界のスターが現れたのは、切断手術をしてリハビリに入ったころ。縁がつながり、互いの母親同士が連絡し合って実現したサプライズだった▲青年はたくさん質問した。すでに世界で活躍していた一つ上の先輩は、いろんな話をしてくれた。「憧れた。いつか一緒にバスケをやりたいと思った」▲それから4年。小川祥汰選手(県立長崎北陽台高出身)は今春、競技歴3年でU23日本代表候補に選出された。フル代表とU23代表を掛け持つ先輩はまだ「雲の上の存在」だが、目標に一歩近づいた▲小川選手は今、こう思っている。「病気を乗り越えてスポーツをする姿を見てもらいたい。誰かの希望になれたら」と。鳥海選手からかけてもらった「頑張れよ」という言葉を胸に。(城)

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