孤立、ストレス…ケアラーの限界 現状「見て見ぬふり」 社会で支える仕組み必要

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 「介護殺人」は1980年代以降、社会問題化し、2000年代に入ると要介護高齢者の増加とともに全国で年間数十件発生。介護される高齢者だけでなく、介護する人をどう支えるかが課題となっている。
 警察庁の統計によると、「介護・看病疲れ」を直接の動機とし被害者が死亡した事件(殺人、自殺関与、傷害致死)は公表を始めた07年から10年間で計478件起きている。それ以降も17年35件、18年32件、19年30件、20年46件と減る気配はない。
 専門家によると、介護殺人の要因は離職などに伴う収入の低下、社会的関係からの孤立、ストレス増大など。一般的に介護は「ゴール」が見えにくく、懸命に努力したとしても相手の死が結果として待ち受けており「達成感」が得られにくいことも挙げられる。
 「夫や息子が一人で介護を背負い込み、行き詰まるケース」が多く、加害者の約7割が男性、逆に被害者の約7割は女性とのデータも。介護疲れで事件当時何らかの精神疾患を発症している事例も少なくない。
 ケアラー支援法・条例の成立を推進する日本ケアラー連盟(東京)の児玉真美代表理事は「核家族化や格差拡大、経済情勢の変化などに伴い、在宅介護を支えた昔の家族モデルは崩れてしまっている。それなのに、現在の介護保険制度は旧態依然のまま、家族による在宅介護を前提とし、それを補完するものでしかない。ケアラー(介護者)はそれぞれ生身の人間であり、いくら頑張っても肉体的・精神的に限界があることが見逃されている。というか、見て見ぬふりをされている。社会が介護者に目を向け、その人が置かれている状況を把握し、支援する仕組みが必要だ」と話す。


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