鈴木聖美 with Rats & Star「ロンリー・チャップリン」が夜の街のカラオケを席巻するワケ  7月20日は鈴木聖美の誕生日 リリース35周年を迎えた大定番のデュエットソング

鈴木聖美 with Rats & Star「ロンリー・チャップリン」長く愛されるデュエット曲

1987年の発売から、平成の間もずっと、そして令和の今まで35年間、男女デュエットの大定番曲として歌い継がれている「ロンリー・チャップリン」。デュエットをほとんど歌わない人でも「ロンリー・チャップリン」なら歌ったことがある、という方は多いと思います。

「ロンリー・チャップリン」がデュエット定番曲になった要因は、鈴木姉弟が放つ "大人の夜" の雰囲気が、夜のカラオケシーンに見事にマッチしたからでしょう。音楽的には "歌いやすく気持ちのよいメロディー" "音域の狭さ" といった特徴があるのですが、特に "ソロパート・ユニゾン・ハモリの絶妙な配分" がデュエット曲として長く愛される要因になっていると思います。

パート割で一目瞭然、一緒に歌っている感がすごい!

誰が曲のどの部分を歌うのかという、いわゆる "パート割り" を細かく見てみると、「ロンリー・チャップリン」のパート割りは "女性ホステスと男性客" が歌うのに最適なパート割りになっていることに気がつきました。なぜそう思うのか、以下に解説していきます。まずは、パート割りを一目でわかるようにした歌詞をご覧ください。

ここでは1番のみ記載しましたが、2番以降も同様です。女性ホステスと男性客が歌っている光景を想像してみましょう。冒頭は男性が歌い始めます。男性が先に歌うことになるので、女性は男性の歌の雰囲気を見て、それに合わせて自分のパートに入ることができます。歌の力量がある女性なら、男性が自信なさげなら寄り添うように歌い、男性が上手だったらそこに合わせる、そんなことができるパート割りになっているのです。

Aメロの男声パート、女声パートが終わると、Bメロの冒頭はユニゾン(同じ音程)で男女の声が重なります。いきなりハモリが来ると身構えてしまいますが、ユニゾンなのですんなりと声を合わせることができ、ここで "一緒に歌っている" というデュエットならではの感覚になります。そして、その後はしばらく女声パートなので、男性はサビ冒頭のハモリに向けて十分な気持ちの準備ができます。

一番の聴かせ所は、サビ冒頭のハモリ!

サビ冒頭のハモリは、スージー鈴木さんが『EPICソニー名曲列伝:鈴木聖美 with RATS & STAR「ロンリー・チャップリン」に仕掛けられた壁』で解説してくださっているように、単純な下三度でありながら、これが思いのほか難しく、カラオケで何十回と聴いてきた中で、きちんとしたハモリを聞いたことは数回しかありません。このハモリが「ロンリー・チャップリン」の一番の聴かせ所と考えていいでしょう。

しかし、ハモリのパートは短く、すぐにユニゾンで高らかに歌い上げます。このユニゾンのメロディーがとても盛り上がるので、ハモリがキマらなかったとしても、それをかき消してくれます。この "少しだけハモってその後ユニゾン" というのは、デュエットを歌い慣れていなくてもデュエットの醍醐味を味わえると思います。サビの冒頭をハモらずにユニゾンになったとしても、歌として違和感がありませんので、ハモらないと決めて歌ってもいいと思います。

女声パートが多いワケは?

全体的に女声パートが多いのも「ロンリー・チャップリン」の特徴だと思います。男女デュエット曲は、基本的には男女が同じ分量を歌うように構成されているので、歌いたい男性にはやや物足りない感じがすると思いますが、"女性ホステスと男性客" という状況では、これが絶妙な配分だなと思うのです。

この状況での男性は "自分が歌いたい" よりも "一緒に歌いたい" "近くで女性が歌う姿を見たい、歌声を聴きたい" という気持ちの方が強いのではないでしょうか。なので、女声パートが多めでも全く問題ないし、むしろ良い雰囲気を生み出しているのだと思います。

「ロンリー・チャップリン」は、他のデュエット曲と比べると、歌うという観点では物足りない部分がけっこうある曲だと、私は思います。なのに、なぜこれだけ長い間、多くの人たちに歌われ続けているのかを考えてみたとき、この曲がカラオケルームよりも夜の店で聴く方が圧倒的に多かったなぁ… と思い、その理由が楽曲や歌い手(鈴木姉弟)の雰囲気だけでは説明しきれないと考えていて、ふと "女性ホステスと男性客" にハマる "パート割りの妙" に気づきました。

「たしかにそうだ」と感じた方も「説明に無理がある」と感じた方も、「ロンリー・チャップリン」のパート割りの面白さを感じていただければ幸いです。この絶妙なパート割りを感じながら歌うと、楽曲の素晴らしさや歌う楽しさがより強く感じられる… かも。

カタリベ: 倉重誠

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