高校野球 グッドルーザーの夏 恩師との一戦に敗れた大分商業

全国高校野球選手権大分大会

準々決勝 7月18日 別大興産スタジアム

佐伯鶴城 060 000 002|8

大分商業 001 100 010|3

「自分の力不足」。エースでキャプテンの重責を担った池田壮史朗(3年)の頬を涙が伝った。立ち上がりから制球に苦しみ、球数が増えた。「相手ベンチが少し気になった。空回りした」と声を振り絞った。シード校同士の対戦となった一戦。大分商業は序盤の大量失点が響き、準決勝進出に届かなかった。

前任の渡辺正雄監督が率いる佐伯鶴城との準々決勝は、待ち望んだ試合だった。3月の人事異動で転任の知らせを聞いたとき、「頭が真っ白になり、みんな泣き崩れた」(池田)。監督に絶大な信頼を置き、一丸となって甲子園を目指していたチームは大きく揺らいだが、「勝って恩返しをする」を合言葉に夏の大会に臨んだ。3回戦を突破し、対戦が決まったとき、池田はワクワクが止まらなかった。「倒すことしか考えていない」と話し、仲石透羽(3年)は「今は相手の監督。敵視している。勝つしかない」と気合を入れた。

キャプテンとしてチームを引っ張った池田壮史朗

試合を振り返れば、気持ちが入り過ぎていたことは否めない。池田の投球には力みが生じ、打線は相手投手の緩い変化球に手を焼き、凡打が多かった。2安打と気を吐いた加藤拓真(3年)は「引き付けるバッティングができなかった」と悔やんだ。部長時代に渡辺監督の野球哲学を学んだ長吉勇典監督は「監督としての経験の差が出た。立て直せなかったのは監督の責任」と選手をかばった。

恩師との一戦に敗れた池田は、「3年生14人、一人も欠けることなく3年間楽しく野球ができた。自分がキャプテンとなり、不安があったときも、同級生が支えてくれた。いろんな経験ができた。最後に(渡辺監督のチームに)負けたのは少し後悔がある」と語った。

対戦を終えて佐伯鶴城の渡辺監督は「複雑な思いがずっとあって、アイツらが頑張っている姿を知っているからこそ気持ちを押し殺し、自分のチームが勝つことを考えた」と明かした。大分商業の3年生に対し「頑張った3年間は無駄ではない。成長した姿を見せてくれた。出会えて良かった」と感謝を口にした。

2安打と気を吐いた加藤拓真

(柚野真也)

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