梅雨末期のような空

 「白雨(はくう)」とは明るい空から降る夕立で、夏の季語になっている。〈木から木へこどものはしる白雨かな〉飴山實(あめやまみのる)。遊んでいた子どもたちが雨をよけながら、木陰から木陰へと走っていく。にわか雨に驚く声が聞こえるようでもある▲白雨の「白」は、辺り一面を白くする雨のしぶきだろうか。きのう、多くの小中学校で終業式があった。例年ならば〈木から木へこどものはしる〉光景が似つかわしい季節に入るが、今年はどうも様子が違う▲夕立がしぶきを上げるどころか、梅雨末期のような妙な空模様が続いている。梅雨ならば早々と明けたはずなのに、このところ列島には前線がでんと居座り、天気が崩れることが多い▲九州でも18日から19日にかけて、積乱雲が連なる「線状降水帯」が相次ぎ発生し、壱岐・対馬では記録的な大雨が降った。もうしばらく梅雨末期のような雨に要注意らしい▲夏空から急に降り出す夕立ならば、干天の慈雨にもなる。梅雨のような空から急に降り出す大雨は、人命までも脅かす。いっとき降る大雨と、いつまでも降り続く大雨。二つは大きく違う▲佐世保市の町名にもあるが、梅雨明けの頃に吹く南寄りの風を白南風(しらはえ)という。白い風に白い雨と、本当は「白」がまばゆい時分だろう。黒い雲も、茶褐色の濁流も見なくていい。(徹)

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