「女性の視点」 男性と共に被災者の支援に 意思決定の場に参加を 長崎大水害から40年<4>

浸水被害で発生したごみを撤去する女性たち=2020年7月8日午前9時33分、大村市

 昨年8月、記録的大雨に見舞われ、土砂崩れで3人が死亡した長崎県雲仙市。当時、小浜町の50代女性は避難所となった町内の体育館で過ごしながら、市職員と住民との間に立って避難生活を支えた。
 職員に住民の状況を伝えたり、保健師による体温チェック時に付き添ったり。夫が市職員で、自身も市役所でのパート経験があり、もともと行政との距離は近かった。
 体育館のホワイトボードに翌日の食事予定や差し入れ品を書きだしたのは、避難住民にとって食事は数少ない楽しみの一つだから。入浴情報を知らせ、トイレも清潔に保つようにすると、住民らの表情に生気が戻ったように見えた。
 地元商店の女性からは消毒用のアルコール、歯ブラシ、生理用品などの衛生品の差し入れが届いた。50代女性は「同性でないと気付かないこともある。ありがたかった」と振り返る。
 長崎大水害(1982年)以降、数々の災害を経験してきた日本。大勢の被災者が長期間の避難を余儀なくされた東日本大震災(2011年)を契機に、性別に関係なく安心して過ごせる避難所対策が求められるようになり、近年、女性の視点を取り入れた災害対応が進む。
 県内の自治体の防災担当部署で女性職員を配置しているのはまだ少数だが、女性の視点を取り入れようとする動きは出ている。諫早市は本年度、避難所運営などに当たる危機管理課を新設し女性職員を置いた。配属された松山厚子さん(53)は「消防団員など防災に携わる女性たちの話を聞きながら、市民の声をすくい上げたい」。
 自治体の多くが、プライベートスペース確保のためのパーティションや生理用品、育児用おむつなどを備蓄。壱岐市は女性職員を避難所に常駐させ女性の要望を聞くようにしたり、西彼長与町は備蓄の生理用品を女性職員が配布することを想定したりしているが、こうした配慮はまだごく一部にとどまる。
 東日本大震災直後から被災女性の支援に取り組むNPO法人「イコールネット仙台」の宗片恵美子常務理事は、女性は男性に比べ高齢者や障害者のケアに関わる機会が多く「災害時にこうした人たちが直面する困難を詳細に把握している」と指摘し、こう語る。
 「避難所などさまざまな場面で男性が運営の中心となるが、女性も意思決定の場に参加することが必要。女性自身も多様な視点を持ち、男性と共に被災者の支援に当たることが求められる」


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