持ち家のメンテナンス費、10年でいくら? 夢のマイホームの現実

人生において一番大きな買い物といえば、やはり家でしょう。マイホームを持つことは、大きな夢の一つというひともいるはずです。

一方で、マイホームを持つと固定資産税やメンテナンス費といったお金がかかってしまうことを考えると、賃貸住宅に住むという選択肢もあります。「持ち家か賃貸か」。そんな悩みを抱えているひとも多いのではないでしょうか。

そこで、マイホームを持つとどれだけお金がかかるのか、新築や中古物件、戸建て、マンションのメンテナンス事情について、個人向け住宅のリフォームやリノベーションを行っている株式会社CONY JAPANの是枝優介氏に、お話を伺いました。


新築戸建て、最初にメンテナンスが必要なのは「給湯器」

まずは新築で戸建て住宅を購入した場合を考えてみましょう。新築なので購入当時はもちろんピカピカ。注文住宅ならば、自分の理想が詰まった夢のマイホームのはずです。

しかし、形あるものはいつか壊れるもの。ピカピカの一軒家も、時間が経つにつれて劣化していきます。新築戸建て住宅の場合、最初にメンテナンスが必要になるのはどこなのでしょうか。

「住宅の設備機器は、浴室、キッチン、トイレ、洗面台、給湯器がメインとなります。家によっては、そのほかに床暖房や太陽光パネルなどの設備があるでしょう。そのなかでも最初にメンテナンスが必要になるのが給湯器ですね」

毎日の生活において、お湯を使わない日はほとんどありません。給湯器は毎日稼働しているため、その消耗度もほかの設備に比べて高くなります。

「給湯器にはガス式と電気式がありますが、どちらもだいたい7~10年ほどで、不具合が出始めます。まれに20年くらい故障しない長寿命の給湯器に出会うこともありますが、それは運がよかったと考えたほうがよいです」

なお、給湯器の年齢は人間の8倍ほど。つまり給湯器の1歳は人間の8歳。10年使った給湯器は80歳なのです。メンテナンスや交換が必要になるのがわかりますね。

では、給湯器の交換にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。

「給湯器のタイプによっても異なりますが、ガス式で床暖房や温水式の浴室暖房乾燥機に対応しているタイプで、高価なものが30~40万円程度。暖房機器に対応していないタイプでは15万円ほどが相場です。電気式の給湯器になると40~50万円といったところでしょう」

30年間のメンテナンス費用はどれくらい?

新築の戸建て住宅の場合、賃貸とは違い長く住むことが前提。だいたい30年くらいは住むと仮定した場合、その間に発生する設備メンテナンスと費用はどのくらいになるのでしょうか。

「まずトイレと給湯器に関しては、間違いなくメンテナンスが必要になります。トイレの場合は便座部分が機械製品になるので、10年以内で交換が目安です。費用はおよそ5~10万円程度です。給湯器も10年が目安となります」

まずは最初の10年でトイレと給湯器は確実にメンテナンスが入ると思ったほうがいいようです。給湯器は先ほど述べたように15~50万円ほどの金額がかかります。

「洗面台や浴室、キッチンに関しては毎日のメンテナンスの程度にもよりますが、トイレや給湯器に比べると、それほど何かを交換することは発生しません。ただし毎日使用するものなので、どこかしらは劣化していきます。劣化した箇所にもよりますが、3~10万円ほどかかることが多いです」

洗面台、浴室、キッチンなどはだいたい15~20年ほどで部品劣化などが発生することが多いようです。

忘れてはならないのが外装。こちらも年数が経てば劣化していきます。是枝さんによれば新築戸建ての外壁塗料の耐用年数は10~15年ほどとのこと。塗り替えるとなると、価格も80~100万円程度はかかるといいます。

そう考えると、戸建ての場合は外装に関しては30年で2度のメンテナンスが必要なことを頭に入れておきましょう。

戸建てとマンションの大きな違いは「外装」

なお、新築マンションにおいても基本的には戸建ての場合と同じメンテナンスがかかります。ただ外装に関しては異なります。

「マンションの場合、外装部分のメンテナンスに関しては毎月の修繕積み立て費が徴収されます。その積み立て費を元にマンションの管理会社がメンテナンスを行うため、戸建てに比べると外装部分に関してはあまり考える必要はないといえます」

マンションの大規模修繕はだいたい12年に一度程度が多いようです。そのために毎月管理費とは別に修繕積み立てが行われるため、資金面に関してはそれほど心配する必要はなさそうです。

また、台風などの自然災害で外装にダメージがあった場合も、マンションの場合は共有部分となるため、管理会社の管轄で修理が行えます。この外装に関してが、戸建てとマンションの一番大きな違いと言えるでしょう。

そのほか、戸建て住宅の場合は床下のシロアリ対策なども5年に一度行う必要があるなど、マンションよりもメンテナンス費用がかかるケースがあります。

中古物件はメンテナンス費用が多くかかる?

これまでは新築戸建ての話が中心でしたが、中古物件を購入した場合のメンテナンス費用はどうなのでしょう。やはり、設備も中古となるため新築よりも費用がかかるのでしょうか。

「中古物件ではリフォーム工事がされてない以上、使われている設備も中古になります。そのため間違いなく新築よりも早期のメンテナンスが発生します。築年数にもよりますが、15年以上経過している設備の場合、メーカーが想定している耐用年数を超えているものがほとんどなので、住み始めたら不具合が起きることも多々あります」

最近は中古物件とはいえ、ハウスクリーニングなどがしっかり行われているため、見た目は新築物件とあまり変わらないこともあります。そのため入居時にリフォームを行わずにそのまま住み始めるひとも多いことでしょう。しかし、それは要注意なのだとか。中古物件を購入して、新生活が始まった早々に設備に不具合が出て設備交換となると、経済的にかなり痛手になります。

設備の不具合など契約内容に適合していなかった場合、買主に対して売主が責任を負う「契約不適合責任」もあります。ただし、物件購入時の契約で、設備に関して契約不適合責任を負わないことが明記されていることもあるため、しっかりと確認しておく事が必要です。

それでは、物件の購入時にどんな対処をすればいいのでしょうか。

「中古物件の購入時は、リフォーム専門店の方と一緒に現地を見て、交換すべき機器のアドバイスをもらうのもひとつの方法です」

また、設備機器だけではなく、床下や壁の中に埋没して普段は見えない配管の老朽化などにも気を配ったほうがいいとのこと。やはり専門家と一緒に内覧するのがよさそうですね。

中古マンションの場合は配管と断熱性に注意

新築マンションを購入した場合、家の内部の設備機器のメンテナンスに関しては、ほぼ戸建ての場合と同じ。外装に関しては先述の通り、修繕積み立て費を毎月収めることで、戸建てよりも手間はかかりません。

では、中古マンションの場合はどうなのでしょうか。新築マンションと比べて一番大きな違いはどこにあるのでしょう。

「メンテナンスでの大きな違いは、配管部分でしょう。中古マンションでは、上階からの水漏れや自宅からの下の階への水漏れが発生することがあります。マンションの共有部分の排水管に関しては定期的にメンテナンスされていることが多いのですが、部屋の中の配管は専有部分に該当するので、住宅所有者の責任範囲となります」

つまり、自分の家で漏水が起きて下の階に水漏れをした場合は、自分の責任になるということ。そのため日々の管理や定期的なメンテナンスは必須です。

水漏れが一番頻繁に起こるのが給湯器からの配管。これは銅管となっており、経年劣化で配管に小さな穴があく「ピンホール現象」が発生し、そこから水漏れが起きてしまいます。そのため、キッチンや浴室の設備機器がリフォームされているからといっても安心できません。

「いくら設備がリフォームされていても、壁の中や床下を通っている配管まで入れ替えられていることはほとんどありません。仮に自分で入れ替えるとなると、壁や床をはがして入れ替えるような大掛かりな工事が必要となりますので、コストもかかってしまいます」

一方、近年の新築マンションでは配管に銅管ではなく、樹脂管が使われているので、ピンホール現象が起きにくく安心とのこと。中古マンションを購入する場合は、配管の材質についても調べておくのもいいかもしれません。

一番安心なのは、中古マンションをリノベーションして購入すること。そうすれば配管の入れ替え作業まで行うことができます。

もうひとつ中古マンションで注意すべき点があると是枝さんは語ります。それは「断熱性」。

「マンションは基本的に断熱性が高いですが、中古マンションの場合は自分が思っているよりも断熱性が低いこともあります。断熱性を上げるリフォームは内窓の取付けだけなどであれば50万円ほどです。全体的な外壁面の断熱を考えていこうと思うとプラスで100万円程度の費用はかかってきます。結構コストがかかるので、購入の際にはその辺りも入念にチェックしたほうがいいですね」

将来的なメンテナンスに対応するために家の購入前にやっておくべきことは?

家を買おうと思ったとき、立地条件や間取り、価格などいろいろと気にするところはありますが、購入するときのことばかりではなく、購入後のメンテナンスも視野に入れて考えるべき。そのためには「まず、自分が購入しようとしている家のことをよく知ることが大事」なようです。

「外壁や屋根の素材は何なのか、使われている配管は銅管なのか樹脂管なのか、床下の状態は良好なのか、中古物件なら設備機器は何年くらい使われているものなのか。家は一生に一度の大きな買い物なので、しっかりと理解して購入しなくてはいけません」

不動産屋に尋ねても、そこまでしっかりとした知識を持っている場合は多くありません。新築の場合はわかる範囲で詳細まで調べたり、中古の場合はリフォーム専門業者に相談したりすることが重要です。

その上で、何年先にどんなメンテナンスが必要なのかを知り、貯蓄をしていくことも大事です。是枝さん曰く「家は自分からメンテナンスの時期を教えてくれない」とのこと。

「ただし、メンテナンスのサインはたくさんあります。しっかりと大切な家に耳を傾け、目を背けることなく、一緒に過ごしていくことが大切です」


マンションならば大規模修繕の備えた修繕積み立てが行われることがほとんどですが、戸建ての場合でも毎月修繕費を貯蓄するなど、計画的なマネープランを立てておきましょう。

いざというときのため、そして計画的なメンテナンスのため、普段の生活の貯金とは別に、家のための貯金をしておくこと。家を購入するときにはそれを忘れないようにしておきたいですね。

© 株式会社マネーフォワード