伊藤雄和(OLEDICKFOGGY)×北畑欽也(bacho)- OLEDICKFOGGY×bacho "東名阪 2MAN TOUR" 開催直前対談

一番格好悪いところを出せるのが格好いい

──OLECKFOGGYとbachoのツーマン・ツアーが行なわれるということですが。

伊藤:彼と喋ることは特にないですけどね(笑)。

欽也:あははは。僕もないです(笑)。

──最初の出会いはいつ頃ですか?

伊藤:あんまり覚えてないですね。

欽也:一番最初は2011年ぐらいじゃないですか。バンドがいっぱい出てるイベントで。

伊藤:じゃあ、そのときは、たぶんそんなに喋ってはないよね。

──ツーマンもけっこうやっていますよね?

伊藤:やってますね。共通の知り合いが組んでくれたツーマンが最初ですかね。

欽也:2016年とかですね。

伊藤:各地でbachoが格好いいって言ってるんだよ。

欽也:え? 伊藤さんが言ってるの?

伊藤:そう。俺が言ってる。bachoと東狂アルゴリズムが二大巨頭かな。THE FOREVER YOUNGは入ってない。クニタケ(THE FOREVER YOUNG)が身体を絞り過ぎてるから(笑)。絞ると脱ぎ出すし。

欽也:前から脱いでましたけどね(笑)。

──伊藤さんと欽也さんは年齢は近いのですか?

欽也:俺はもうすぐ40歳です。

伊藤:俺はもうすぐ43歳。でも年齢は関係ないかな。

欽也:いや、関係ありますよ。伊藤さんとはめっちゃ友達っぽく喋ってるけど、先輩だし尊敬しているので。最近はだいぶ謙虚な感じはなくなったかもしれないですけど(笑)。でもやっぱり年齢は関係ありますね。

伊藤:俺は全然気にしてないけどね。そういうところで育ってきたし。

──最初の印象って覚えてますか?

欽也:姫路の先輩がOLEDICKFOGGYを好きな人が多くて、「かっこいいから聴け」ってよく言われていて。もちろん、俺も好きだったから最初に対バンしたときは嬉しかったですね。

伊藤:俺も名前はよく聞いてたし、ライブを観てすごいなって思ったよ。

欽也:最初から思ってました?

伊藤:思ってたよ。

欽也:俺、最初は伊藤さんにはbachoはハマってないのかな? って思っていました。口数少ないし、話しづらいし。でもいろいろ話せるようになってから、本当に評価してくれてるんやなって。

伊藤:bachoは詞が良いよね。素晴らしいと思う。こないだもライブ観ててグッときた。なんだっけ、あの「お前の大事な時間を使ってしまってごめん」みたいな歌詞の曲あるでしょ。あれ、良いよね。

欽也:ちょっとちゃうけど、でも嬉しい。

伊藤:すごい鳥肌が立った。

欽也:なんだろう、伊藤さんが言うとちょっとバカにされてる感じがするんやけど(笑)。

伊藤:マジでいいよ。基本的に女々しい歌詞が多いでしょ。俺も女々しいけど俺とはまた違うから。

──女々しさのベクトルが違いますよね。

伊藤:違う。欽也は自分の情けない部分をしっかり全部出してるから。

欽也:そういう歌詞が一番書きやすいですからね。

伊藤:自分の一番格好悪いところとか妬みとか出してるでしょ。それが格好いいと思ってるんだよね。

欽也:それ以外のやり方があまりわからないだけかも。

本音かどうかわからん感じもめっちゃ好き

──逆に欽也さんは伊藤さんの歌詞をどう見ていますか?

欽也:伊藤さんの歌詞も確かに女々しさはあるんやけど、俺みたいに直接言ってないというか、けっこういろんな言い回しで表現するなって。そういうイメージがありますね。

──オナニーの曲をあんなに詩的に歌える人はいないですからね。

欽也:あれはマジで伊藤さんにしかできない。俺が歌ったら気持ち悪いと思う(笑)。

──似てるなって思う部分はあったりしますか?

伊藤:特にないかなあ。あ、あるか。人気バンド嫌いでしょ?

欽也:全然そんなことない(笑)。わりとなんでも好きですよ。

伊藤:なんでこのバンドがこんなに人気あるんだろうとか考えない?

欽也:まあ、考えるかな。でも嫌いとかは全然ないですよ。

伊藤:売れてるバンドを見て俺には無理だなって思うこといっぱいあるだよなあ。俺、対バンとかフェスとかでいろんなバンドに挨拶に行ったりとかできないし。

欽也:それはそれで無理してやってるわけじゃないと思うし、人柄やと思いますけどね。

──OLEDICKFOGGYにはOLEDICKFOGGYの人柄がありますからね。それは音楽にも表れていますし。

欽也:うん。やっぱりOLEDICKFOGGYが一緒やと安心しますからね。みんな先輩やけど、OLEDICKFOGGYってみんなちょっとバカじゃないですか。ライブ前からガンガン酒飲んでるし、ライブが終わってからもずっと飲んでるし。そんなバンド、最近あまりいなくないですか?

伊藤:SHANKがそうだね。俺たちに酒で付き合ってくれるのはSHANKぐらいかな。この前、SHANKのユーキが酒弱くなったって言ってたけど、全然そんなことなかった。

欽也:あははは。OLEDICKFOGGYと一緒のときは入りから片手に缶ビール持ってくるから安心するんですよ。

伊藤:いや、ライブ前は、昔よりは全然飲まないよ。ちゃんと音楽を真面目にやってますよ。

欽也:確かに伊藤さんはストイックなところがあるから。

伊藤:ストイックじゃないよ、実は。願掛けしているだけ。

欽也:最近は声出るかどうかを伊藤さんが気にしてるってイメージもあって。

伊藤:最近は出るようになったよ。コロナでスタジオも入ってなくて1年ぶりぐらいに歌ったときは何も声が出なかったけど、最近は戻ったかな。声も枯れないし。

──お二人ともライブでは絶叫に近い歌い方をすると思いますが、声のコンディションにお酒は関係します?

伊藤:そんなに関係ないかな。

欽也:俺もないと思う。あるんだったら飲むなよって話ですよね(笑)。

伊藤:ライブの打ち上げだと、たくさん喋ってしまい、それが声に影響することはあるけどね。

欽也:それはある。寝る時間も少なくなるから負担もありますからね。朝まで飲んですぐ回復するかっていったら年齢的にもそうじゃないので。だから連続して何本もライブがあるときはさすがに考えます。声が出なくて一番へこむのは自分だから。誰かに言われるからとかじゃなくて。

──お互いボーカリストとしてはどう見ていますか?

伊藤:素晴らしいボーカリストだと思います。

欽也:俺、伊藤さんのこと、めっちゃ大好きだし尊敬してるから、伊藤さんみたいな人に言われたら嬉しいですね。ホンマに思ってないことは言わなそうじゃないですか。

伊藤:全然、言うよ(笑)。俺、曲聴かなくても帯のコメント書けるタイプだから(笑)。

欽也:そういうとこも含めて本音かどうかわからん感じもめっちゃ好き。っていうかむしろ嫌いなとこなんてないですけどね。強いていうなら顔ぐらい(笑)。

伊藤:俺もお前の顔は嫌いだなあ。bachoだったらミウラは良い顔してるけどね。あいつ一番酔っ払いでしょ? 打ち上げでうるさくない?

欽也:そうかなあ。そんなことない気がするけど。

大人になって新しい仲間を増やせるのはバンドマンだけ

──今回ツーマン・ツアーが開催されますが、ツーマンでツアーを周るのってやっぱり特別ですよね。

伊藤:岡山で対バンしたときに打ち上げで俺が言ったこと覚えてる?

欽也:全然覚えてないです。

伊藤:大人になっていくにつれて、新しい仲間が増えることなんてなくなっていくのに、バンドって素晴らしいよねって話を俺がしたんだよ。だって各地に仲間が増えてくなんて、普通に生活してたらないじゃん。それができるのはバンドマンだけだよ、って話をして乾杯したんだよ。覚えてない?

欽也:すみません、覚えてないです(笑)。

伊藤:ドラクエみたいじゃない? いろんな町に行っていろんな仲間ができて。

欽也:でもホンマにOLEDICKFOGGYはメンバーみんな、いつも楽しそうですよね。あの空気、なかなか出せへんと思う。ツアーを周ってると、ステージだけじゃなくて移動も楽屋も、いつも一緒やないですか。全部がOLEDICKFOGGYは楽しそう。

伊藤:そうかなあ。

欽也:同級生チームはいつも楽しそうやないですか。

伊藤:でも、辞めたTAKEとかとは、全然喋ってなかったけどね。でも別に仲が悪いとかじゃなくて、保育園から一緒だったから、もう特に喋ることがないってだけで。

欽也:ああ、確かにバンド・メンバーでしかあり得ない人間関係はありますよね。普通の友達とも違うし、かといって仕事仲間でもないし。変な感じですよね。

伊藤:ロックは音楽やるっていう総合芸術じゃない? メンバーはもちろんだけど、今回だったら俺たちとbachoだし、次はまた違うバンドと違う芸術を作るだろうし。客同士も、いつもと違う客も来るから、そこで生まれるものもあるし。

欽也:だから面白いんですよね。

伊藤:そこを含めてやっぱりツーマンがいいよ。スリーマンだと1バンド1時間やったら、お客さんもきついし。それにツーマンのほうが特別感がある。

──ツーマン・ライブだったりスプリット作品はやっぱり特別ですよね。bachoだったらLOSTAGEとスプリットを作っていましたし、最近はOLEDICKFOGGYもLEARNERSとスプリットを出したばかりですが。やる側も見る側もやっぱり思い入れは強くなるというか。それに対して東狂アルゴリズムの佐佐木さんは嫉妬してると思いますけど(笑)。

伊藤:あいつとは、いつかデュエットするから大丈夫です。バブルガム・ブラザーズの「WON'T BE LONG」みたいな曲を(一同笑)。

──ツアーも楽しみですね。

伊藤:本当は2年前に決まっていたけどコロナで延期になっていて。そろそろいいんじゃないかと思い、やっと実現できるツアーだから本当に楽しみですね。3カ所しか行かないけど、名古屋は俺の誕生日だから。その日は泊まりにしてるし。

欽也:え、マジですか?! 盛大にお祝いしましょうよ!

伊藤:俺、ケーキとか食わないからやめてね。もったいないから。ケーキよりビーフジャーキーがいい。あと泡風呂とか入りたい。泡パーティーしよう。

欽也:泡パーティーってなんですか(笑)。

伊藤:あとたくさんプレゼント貰いたいから、誕生日だってことはちゃんと告知しておかなきゃね(笑)。煙草とかお酒とかいつも助かってるんで(笑)。コロナでライブがない時期は全然いい酒が飲めなかったし。

欽也:もらった酒でいい酒飲んでるんですか(笑)。

伊藤:いや、本当に助かってます。みんな、頼むよ(笑)。

──ツアーが始まる頃にはコロナで、何も起きていないと良いですけど。

伊藤:新しい変異株が出てるかもしれないですからね。

欽也:もう大丈夫でしょ。出たとしても「ライブをやめよう」って空気にはもうならない気がしますけどね。腹くくるって言ったらおかしいけど、ある程度やっていこうってなる気がする。

お互いの曲をキャバクラのカラオケで歌おう!

──この数年を経て、元に戻るのではなく、新しい価値観で新しいライブハウス・シーンが生まれていると思うのですが、2022年はまだまだここから面白くなる気がしているので、このツーマン・ツアーはその起爆剤になりそうですね。

欽也:単純にめちゃくちゃ楽しみですよね。お客さんにもできるだけ自由に観てもらいたいし、本当に楽しみです。

伊藤:コロナで弾き語りの需要増えたでしょ? やっぱり一人のほうが楽?

欽也:全然楽じゃないですよ。でも誘ってもらってスケジュールが合えばどこでも行きますよ。伊藤さんは弾き語りしないんですか?

伊藤:俺、ギターコードしか弾けないから。

欽也:それで全然いいじゃないですか。

伊藤:50歳ぐらいになったらやろうかな。声も張らない感じでフォークみたいな感じ。でもやっぱり俺は一人だと寂しいかも。一人旅も嫌いなタイプだから。だから50歳ぐらいになったら、二人で弾き語りツアーしようか。

欽也:50、60くらいだったら、まだまだバンドで行きましょうよ。多分やれるんじゃないかな。OLEDICKFOGGYは終わる予感が全くしないから。

伊藤:辞める理由も特にないからね。

──2011年の初対バンから10年とちょっと経ってツーマン・ツアーをしてるので、50歳60歳でのツーマン・ツアーも全然いけそうですね。

伊藤:1台の車で行こうか。バスとか借りて。

欽也:いいですね。50歳まで頑張りましょう。

伊藤:最近、健康診断で胃が悪くて、結局何もなかったんだけど、胃がずっと違和感があるんだよね。

欽也:伊藤さん、よくわからんウィスキーばっか飲んでるからでしょ。いつも強い酒ばっかストレートで飲んでるから。

伊藤:格好いいでしょ?

欽也:確かに格好いいですけど(笑)。

伊藤:でも最近ちゃんと気絶するようになったからね。酔っ払ったら寝ちゃう。でも、おしっこも漏らしちゃう。

欽也:それはあかん。

伊藤:家の玄関で、全裸で、びしょびしょになってることあるからね。

──これはとんでもないツアーになりそうですね。

欽也:本当に珍道中になると思う。

伊藤:キャバクラ行こうよ。ライブ終わったら。

欽也:奢ってくださいよ。

伊藤:いいよ。でも女の子に飲ませるお酒は自分で払ってね。セット料金だけ払うから。

欽也:俺、キャバクラとか全然行ったことないんですよ。

伊藤:俺もそんなにないよ。

欽也:キャバクラでなにするんですか。

伊藤:酔っ払ってくるとカラオケを歌うんだけど、自分の曲とか歌って「これ俺の曲」とか言うんだけど、信じてくれないの。俺、仕事の作業着とか着てるし。bachoはカラオケ入ってないの?

欽也:ありますよ。でもカラオケで俺らの曲歌うの、きつくないですか? 自分でもイヤだもん。

伊藤:確かにシャウトとかカラオケでするの寒いか。じゃあ名古屋のキャバクラで歌おうよ。

欽也:キャバクラで俺がbachoの曲をカラオケで歌うのやばいでしょ?

伊藤:MVになりそうじゃん。隣で女の子がつまらなそうに酒飲んでるみたいな。いいね、それ。じゃあツアーの打ち上げはキャバクラで(一同笑)。

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