安倍元首相銃撃 応急処置した医師は「一目で厳しいと思った」

7月8日、日本列島に衝撃が走った。奈良市内で参院選の演説中だった安倍元首相が銃殺されたのだ。逮捕された山上徹也容疑者(41)は旧統一教会に恨みを募らせた末、事件を起こしたとみられている。安倍元首相はドクターヘリで奈良県立医科大付属病院に搬送されるも、同日午後5時すぎに死亡が確認された。(ジャーナリスト 粟野仁雄)

7月8日金曜日、蒸し暑くて泳ぎに行こうかと思ったら昼前の民放の速報ニュースがと流れた。「安倍前首相、撃たれる 心肺停止か」。正午のNHKニュースで確認して現場に飛んだ。

発生から約2時間あまり。奈良市の近鉄大和西大寺駅北口のロータリーに到着すると、多数の警官が走り回り、上空に報道ヘリが飛ぶ物々しい雰囲気だった。

ある主婦は興奮気味に話した。

「佐藤さん(啓氏・参院自民党候補)と交代で安倍さんが台に上がって演説を始めた直後、『ボソッ』という鈍い音が聞こえた。30から40歳くらいの男が直径15㌢、長さ30~40㌢くらいの黒い筒みたいなものを向けていた。言葉も発せず、おとなしく取り押さえられていた」

午前11時半頃、安倍晋三元首相はロータリー中央付近のガードレールの中で台に乗って演説を始めた。外れた1発目の銃声で安倍氏は振り返ったが、約3秒後の2発目が命中し倒れた。

騒然とする現場=7月8日、奈良市(粟野仁雄撮影)

「誰かあー、看護師免許を持つ人いませんか。お医者さんは」と騒然となる。居合わせた看護師が心臓マッサージをし、医師も駆けつけ、ヘリで橿原市の奈良県立医科大病院に緊急搬送された。

筆者は病院にも向かった。

3時間以上の手術が行われたが、鎖骨付近から入った弾丸は心臓も損傷していた。病院は「午後5時3分に死去された」と発表したが、現場で応急処置をした医師は「一目見て厳しいと思った。自発呼吸はなく、心肺停止でした」と話しており、事実上、即死だったようだ。5時前に昭恵夫人が病院に到着しており「死に目に会えた」ということにしたのか。

同大学の福島英資教授は「首に2カ所の銃創があり、一つは肩へ抜けていた。大量の輸血と止血をしたが、心拍は再開しなかった。失血死とみていい」と説明した。体内に弾丸はなかった。「安倍さんの表情は?」と筆者が聞くと、同教授は「見る余裕はなかった」と話した。

安倍元首相の銃撃死を伝える7月9日付の全国各紙(矢野宏撮影)

参考記事:安倍元首相銃撃 「旧統一教会とつながりがあると思ったから」山上容疑者

安倍政治を評価しない筆者も翌日、30分並んで花束を買って献花、弔意を示した。だが2分ほどして献花台を振り返るとその花束がない。段ボール箱に次々と詰め込んでいる。聞けば「全部、安倍事務所に送るんですよ」

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