安倍元首相銃撃 「旧統一教会とつながりがあると思ったから」山上容疑者

安倍元首相が参院選の演説中に銃撃され死亡した事件で、逮捕された山上徹也容疑者(41)は海上自衛隊を除隊後、職を転々としていた。京都府内の製造業の幹部はこう打ち明ける。「1月に運送会社の運転手と荷物の積み方をめぐりトラブルになり、3月には同僚に暴言を吐いた4月から『体調が悪い』と言って休みだし、5月に辞めてしまった」(ジャーナリスト 粟野仁雄)

7月13日も献花者の列は長蛇だった。

新たな弾痕も見つかった。見ると、駐車場の壁に三つの弾痕があった。距離は狙撃位置から約90㍍。目撃者には「衝撃波を感じた」と言う人もおり、2本の金属管を合わせてガムテープで巻いた無骨な手製銃の爆発力、殺傷力は十分だった。

山上徹也容疑者(41)は「当初、爆発物を作ろうと思ったが、他の人を巻き込みたくなかったので銃にした」と供述しているから「目的」は十分に果たした。

新大宮駅近くの山上容疑者のマンションでは階下の女性は「7月5日だったか、エレベーターで会ったけどあいさつしても黙っていた。なんか悩んでいるんかなと思った」と話した。

住民たちは「夜中とかに『キューン』という金属を切るような音もよく聞こえた。うるさくて管理人に苦情を言いに行った人もいた」と話していた。

現場検証する警察=7月8日、奈良市(粟野仁雄撮影)

山上容疑者が働いていた京都府内の製造業の幹部は「おととしの10月、派遣会社にフォークリフトの免許を持つ人を選んでもらったら山上容疑者が来た。問題はなかったが、今年1月に運送会社の運転手と荷物の積み方をめぐりトラブルになり、3月には同僚に暴言を吐いた。4月から『体調が悪い』と言って休みだし、5月に辞めてしまった」と話す。

山上容疑者は唐招提寺のある近鉄橿原線の尼ヶ辻駅近くで育った。進学校とされる県立郡山高校を卒業したが、専門学校に行ったとみられる。「息子が小学校時代に山上容疑者と同窓生だった」という女性は「お母さんについては記憶にありません。すごく勉強ができると息子から聞いていて、それは今でも覚えています。息子は別の中学に行きましたが、地元の中学ではバスケットとか頑張っていたと聞きました」と話す。

報道によれば、幸福な家庭とは言い難い。京大出身で建設業にいた父親は容疑者が幼い頃に自殺し、生まれながら病気だった兄も自殺した。2002年に3年の期限付きで呉市の海上自衛隊に入隊したが、その後は職を転々としたようだ。

事件発生の夜、奈良県警が記者会見。山村和久捜査一課長は「『特定の団体に恨みがあり、安倍元首相がこれとつながりがあると思い込んで犯行に及んだ』と供述している」と明かした。団体とは「世界平和統一家庭連合」。1980年代に「霊感商法」や歌手の桜田淳子さんの「合同結婚式」などで騒がれた韓国の旧統一教会だ。

参考記事:安倍元首相銃撃 応急処置した医師は「一目で厳しいと思った」

旧統一教会は田中富広会長が母の入信事実を認め「2002年に母親が破産したのは聞いている。その後、高額の寄付は求めていない」などと記者会見したが、寄付額は明かさなかった。

旧統一教会側の会見=7月13日放送のテレビ朝日「モーニングショー」より

容疑者の伯父が「母親は親から相続した1億数千万円の不動産を売ってすべて統一教会に貢いだ。5000万円を私が取り返した」と話していることが「週刊文春」などで報じられ、山上容疑者も「それで家庭が破壊され統一教会を恨んだ」と供述していることが伝えられると、旧統一教会は「家庭事情を考えて5000万円を返却した」と発表したが、寄付額は伏せたままだ。

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