「優しくかわいいお母さん」長崎・海星高女子テニス部 大串秋穂監督 下宿始め、選手見守る 躍動の青い力 四国総体2022

海星女子テニス部の大串監督(中央)と下宿生4人。強い絆でインターハイに挑む=長崎市内

 インターハイに出場する海星女子テニス部は、この春から部員4人が下宿生活を始めた。大串秋穂監督(34)が空き家になっていた長崎市の自宅隣の民家を譲り受け、朝夕に手料理を振る舞うなど教え子たちと共同生活を送っている。はつらつとして練習では厳しい先生も、家に帰れば母親代わり。「優しくてかわいいお母さん」と慕われている。
 彼女たちが暮らす家は、斜面地に民家が立ち並ぶ長崎らしい地域の一角にある。2軒並んだ片方が、大串監督と猫2匹が暮らす自宅。生徒4人の部屋があるもう一方の家は、監督自ら内壁を塗り直したり、障子を張り替えたりとDIYでリフォームを施した。
 選手を私生活から管理することで部を強くしたい、そのためには自らの犠牲もいとわない-。部活強豪校が寮や下宿を手がけるのはこうした理由が一般的だが、大串監督は少しトーンが違う。
 「強くしたいのはもちろんあるけれど、それ以上に子どもたちのことを深く知りたい。何より自分自身がこういうのが好きだから、大変というよりは全然楽しんでいる」
 大串監督は佐世保北高1年時に地元インターハイ「長崎ゆめ総体」に出場するなど県内トップで活躍した経歴を持つ。自身の経験を踏まえて、生徒たちがその時々で何を考え、何に悩み、それに対してどう助言できるのか。競技面以外のことも含めて文字通り親身になってコミュニケーションを取っている。甘えてくる子どもの頭を優しくなでる日もあれば、嫌いな食べ物を残す子どもをしかる日もある。穏やかに、フランクに。家の中は女子だけの充実した時間が流れている。
 以前まで生徒たちは遠方から通学したり、長崎市内にある他の下宿などに暮らしたりしていた。新しく下宿生活を始めたことで栄養満点の料理を食べ、時間的な余裕もできた。故障が劇的に減り、県新人大会2位から県高総体で雪辱Vを果たすなど、目に見える結果が出ている。
 3年生の川上くるみ(17)は、午前6時前から朝食の支度をする監督を率先して手伝う日も多い。昨年の県高総体で団体、個人2種目のタイトルをすべて獲得。その後、勝てない時期が続いたが、下宿生活を経て復調し、今年も3冠に輝いた。胸に抱いているのは、監督への感謝の気持ちだ。
 「いつも元気で、私たちのことを一番に考えてくれる。パワーをもらっている。恩返しになるようなプレーをインターハイで見せられたらいい」
 テニスは28日から競技が始まる。団体で4度目の出場となる海星女子テニス部。全国に強いチームはたくさんあるが、日々築いてきた親子同然の絆はどこにも負けない。


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