ハラスメントか接遇マナーか…線引きが難しい職場の適切なルールについて議論

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。7月15日(金)放送の「モニフラZ議会」では、職場における“適切なルール”について、Z世代の論客が議論しました。

◆職場でミニスカート不可はハラスメント? マナー?

愛媛県の松山市役所で「ミニスカート不可」、「結婚指輪以外の装飾品を身につけない」、「意図的に髪を染めることは不可」といったルールが貼り出され、波紋を呼んでいます。

市議からは「悪しき昭和の匂い」、「ハラスメントではないか」と指摘がある一方で、市役所の担当者は「重要な接遇マナーのひとつ」、「現時点で見直しは考えていない」と真っ向から反論。

このルールが制定されたのは、2006年。当時、制服が廃止されたのと同時に、服装を自由にすることで利用者に不快感を与えないために設けられました。松山市役所では、過去に「クールビズ期間中は、ポロシャツOK」としましたが、利用者から「印象が悪い」、「市は服装を定めていないのか」といった意見があったそうです。

この問題に、生理への理解を広げる団体「#みんなの生理」共同代表の谷口歩実さんは、「逆に多様性のある服装をしていると、その人の本質が見えるのではないか」と自身の見解を示し、自由な服装のほうがコミュニケーションの入口にひとつになると述べます。

アフリカの紛争問題を研究する東大院生の阿部将貴さんは、「僕も本音としては"こんなの古すぎる”という立場だが、自分が人事課の人間だった場合、その線引きは難しいと思った」と複雑な心境を吐露しつつ、最終的には「働き手と決め手が協議しているかが大事」と主張します。

一方、株式会社ゲムトレ代表の小幡和輝さんは「ルール自体は勝手にやったらいい」とし、「ただ、先に公開してほしい」と要望。それこそ校則は今、ブラックボックス化している学校が多いと言い、「(学校にしろ、企業にしろ)入ってからそんな規則知らなかったということもある。だからしっかり公開し、それを含めて選ぶのがいい。たぶんそういうところは選ばれなくなる。それが一番フェアだと思う」と力説します。

これにキャスターの田中陽南も「(自治体のWebサイトなどで)事前に公開しておくことで市民からのクレームは減るかもしれないですね」と納得。谷口さんも「規則の公開とともに、それを変えるプロセスも明確化してほしい。どういった手続きをしたら変えられるのかも明示してほしい」と希望します。

◆誰がなんのために作ったかわからない"謎ルール”

街頭の意見を聞いてみると、「市役所は公共の職場なので、ある程度ルールはあったほうがいい」(22歳・学生)、「世間的なことを考えたら、あったほうがいいのではないかと思う」(26歳・接客業)、「今風のルールではない」(25歳・学生)。「時代錯誤」(54歳)、「役所に勤める方に細かなルール付けをする必要はない」(68歳)など賛否両論。

また、身の回りにある意味がよくわからない「謎ルール」について聞いてみると、「男性の髪型は耳にかかったらアウト」(21歳・学生)、「高校時代、靴下の丈がくるぶしより下はNG」(25歳・会社員)、「高校時代、セーラー服のリボンが短すぎNG」(22歳・学生)といった意見がありました。

こうした声に、キャスターの堀潤は「根底には固定観念というか、ジェンダーはこうあるべきといったことも見え隠れする」とつぶやくと、谷口さんも同意しつつ「時代も変わってきており、この松山市のルールも2006年制定。この十数年で社会も変わってきているので、私は変えていきたいと感じる」と社会の変化に対応すべきと訴えます。

今回の件に関しては、舞台が"市役所”であることもポイントと堀。「公共施設はいろいろな人にとってちょうどいい塩梅の秩序が必要という話で、その線引きをわかりやすくしたのが今回のケース」と話していましたが、小幡さんは「僕はそうしたものが全く気にならないので、自由にしたらいいと思うし、こういうルールは嫌い」と主張

阿部さんから「もしも小幡さんだったらルールはなし? 金髪もOK?」と質問が飛ぶと、小幡さんは「なしでいい。ただし、それによってネガティブなことが起きれば、それは別問題」と即答。さらに「こうしたルールのある職場で働きたい人をマッチングすればいい。そういう人もいるかもしれないので。だからこそ、僕は先にルールを伝えたほうがいいと思う」と改めて事前の情報公開の必要性を語ります。

ここで、職場の謎ルールについてまとめたアンケート調査を紹介。例えば、「上司の仕事が終わっていないと帰れない」、「出社時間より30分早く来なければならない」、「郵便を各個人に配る担当が女性社員と決まっている」といった声があるなか、謎ルールがあるかという質問に対し、約43%が「ある」と回答。そして、謎ルールによってストレスを受けた経験があるという人は7割近くで、退職を検討したことがある人は4割近くいるということでした。

堀は、謎ルールの特徴として「明文化されていないこと」を挙げます。そして、「就業規則や校則などは明文化され、公開しようと思えばでき、コンセンサスを得ることができるが、"謎ルール”は空気・慣習・雰囲気、その場の慮りかもしれない」と推察すると、谷口さんはそれが次世代に引き継がれている現状を憂慮。「自分が受けたものを考えずに次世代に押し付けてしまう、その悪循環もあると思う。それを断ち切れる勇気や知識を育んでいきたい」と切望します。

この謎ルールをなくすために必要なことは何か。ハラスメント対策の専門家・山藤祐子さんは、校則や就業規則に関してみんなで考えていく学校や企業が増えていると言い、「時代に合わせたり世の中に合わせていったり、当然法改正と合わせていくことで、できるだけ多くの人が納得できる状況を作ることが謎ルールをなくしていく、謎だなと思わなくてすむことになると思う」と語ります。

最後にZ議会を代表し、谷口さんが提言を発表。それは「誰を想定しているのか」、「そこから排除されている人は?」の2つ。

「例えば、女性像や男性像、会社員像など、みんな自分で想定してしまっているものがあるのではないかと考えると、そこからこぼれ落ちてしまう人がいるのではないか」と危惧。そして、「そうしてこぼれ落ちてしまう人がいるのであれば、そのルールは誰かを苦しめるものになってしまうので、この2点を考え、より民主的なルール作りを行い、情報公開していく。そういう取り組みがあれば」と今後に期待していました。

※この番組の記事一覧を見る

<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

© TOKYO MX