夏休み気をつけて 県内クマの目撃急増 昨年7月の3倍【動画】

県内で目撃が相次いでいるツキノワグマ(県自然環境課提供)

 7月に入ってから栃木県日光市など栃木県北部を中心にクマの目撃が増加している。警察発表などに基づく目撃情報は25日現在で35件となり、12件だった昨年7月の3倍に上る。夏場の山中の木の実不足に加え、新型コロナウイルス禍での観光客の戻りも目撃情報の増加に影響しているとみられる。日光市では小中学校敷地内に出没したほか、鹿沼市では登山客が左腕をかまれ重傷を負った。夏休みの観光シーズンを迎え、県などは改めて注意を呼びかけている。

 県自然環境課などによると、7月の目撃件数は日光市25件、那須町4件、那須塩原市3件、足利市、佐野市、鹿沼市各1件の計35件。過去5年間の目撃件数の平均は約18件で、今年は既に2倍になっている。7月で最多だった2019年の37件に迫る勢いだ。

 目撃情報は4月1件、5月3件、6月9件で、7月に入り急増している。

 県内に生息するのはツキノワグマで、推定生息数は606頭。冬眠明けの5月ごろから目撃が増え出し、6~8月に多くなる傾向があるという。

 日光市では奥日光の観光名所「竜頭の滝」周辺で目撃が相次いだ。このため同市は注意喚起の看板を滝周辺4カ所と中宮祠小中学校付近の2カ所に設置した。

 相次ぐクマの目撃について、同課は「食糧を求めて行動範囲を広げている可能性がある」とみる。例年7、8月は木の実など山中の餌が少なくなりやすい。奥日光の目撃場所の周辺などでは、クマが好むオオヤマザクラの実がなる季節を迎えているという。

 また同課は、新型コロナの行動制限がなくなり、観光客が一定数戻ったことも影響したとし、「人出が増えれば目撃件数の増加につながる」と分析する。

 夏休みシーズンを迎え、登山やキャンプなどで山に入る機会が増えることも見込まれる。同課は(1)クマがいそうな場所に行かない(2)早朝や夕方は特に注意(3)1人での行動は避ける(4)鈴などで音を出しながら歩く-などの対策を求めている。

 本年度の負傷者は1人。過去10年は年間0~4件で推移している。万が一、クマに出合ってしまった場合について同課の担当者は「背中を向けずゆっくりと離れることが大切。刺激しないことが重要」と話した。

県内で目撃が相次いでいるツキノワグマ(県自然環境課提供)

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