さじを投げられた?

 「さいは投げられた」とは、勝負を懸けたさいころは振られた、後戻りできない、と決意を表す言葉だが、「さじを投げる」と言えば、どうしようもなくて諦めること。似ていても意味はまるで違う▲つい先日、沖縄で観光業の人が「さじは投げられていますから…」とテレビ局のインタビューに答えていた。さいは投げられた、やるしかない、と言うつもりが「さじを投げる」とごちゃ混ぜに…と、その時は思ったが、案外と現状を言い当てている気もしてくる▲途方もなくコロナ感染が広がっても観光客が押し寄せる沖縄県。歓迎するだけ、と観光業者は腹をくくるが、「来るならばリスクを承知の上で来てほしい」と、沖縄県はくぎを指す▲かたや政府は行動制限を見送り、「静観」を決め込んでいるようにも映る。「さじは投げられていますから…」。他意はないにしても、政府への皮肉に思えなくもない▲旅行大手エイチ・アイ・エスによれば、国内旅行の予約者数は沖縄県がトップで、北海道、長崎県-と続くという。人ごとではない▲行動制限には至らなくても、人の流れを緩やかに抑えるよう、呼びかけを絶やさない。国が静観するならば、地方自治体が知恵を絞る時だろう。経済を回そうという人々に「当たってくじけろ」と言うわけにはいかない。(徹)

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