ピンホールカメラを使い、ピンホール写真を芸術の域に高めた試みを行い、1982年に34歳で早世した大阪府生まれの写真家山中信夫(やまなかのぶお)。没後40年の節目に、山中が戦後の視覚芸術に残した足跡を再確認する企画展「ピンホールの魔術師山中信夫☆回顧展(リマスター)」が県立美術館で開かれている。9月4日まで。
ピンホールカメラは、完全に遮断された箱に小さな穴を開け、内部に上下左右逆さまで像が投影されるカメラの原型。71年にデビューした山中の活動期間は病死するまでわずか10数年だが、ピンホールカメラを用いた現代芸術の表現が脚光を浴びた。
代表作である「マチュピチュの太陽」「マンハッタンの太陽」「東京の太陽」のシリーズはピンホールカメラの穴から入る光をフィルムに定着させてプリントした作品。穴はわずかな光しか通さないため露光時間が長時間になり、その間に動いた太陽の軌跡が円環状に映る。まるで太陽にぽっかりと穴が開き、人間の世界をのぞき込むような不思議な感覚に陥る。