「やまゆり園事件」文庫版に 遺族の葛藤、自立へ歩む被害者…5年後の報道を加筆

ドキュメント「やまゆり園事件」の文庫版

 2016年に起きた知的障害者殺傷事件を巡り、神奈川新聞社のこれまでの取材をまとめたドキュメント「やまゆり園事件」の文庫版が、幻冬舎から出版された。20年発刊の単行本の内容に、その後の取材の一端を加筆している。

 事件は16年7月26日未明、神奈川県立知的障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)で発生。入所者19人が殺害され、職員2人を含む26人が重軽傷を負った。「障害者は不幸を生む」と犯行に及んだ元職員の植松聖死刑囚(32)の死刑判決は20年3月に確定したが、死刑囚は22年4月に再審請求している。

 書籍は発生から事件と向き合い続けてきた取材班が事件の真相に迫るドキュメント。事件があぶり出した障害者への差別と偏見、優生思想、インクルーシブ教育など、幅広い視点から事件を掘り下げている。

 文庫版では、死刑を求めた遺族のその後の葛藤や自立生活を始めた被害者の姿など、事件から丸5年となった21年7月の報道の一部も追加した。

 巻末の解説は、北九州市で生活困窮者らへの支援に取り組む認定NPO法人「抱樸(ほうぼく)」の奥田知志理事長が執筆している。

 432ページ、913円。全国の書店で販売している。

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