デンカ株式会社(東京都)が2023年3月期第1四半期決算(連結)を発表、前年同期比で増収も交易条件の悪化などで減益に

デンカ株式会社の青海工場(新潟県糸魚川市)

デンカ株式会社(東京都)は5日、2023年3月期第1四半期決算(連結)を発表した。

売上高は943億6,900万円(前年同期比8.8%増)、営業利益は49億200万円(前年同期比37.7%減)、経常利益は51億4,800万円(前年同期比31.6%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は43億3,700万円(前年同期比29.6%減)となった。

第1四半期連結累計期間の業績は、価格面では原燃料の上昇に応じた見直しや円安による手取り増があったが、数量面では上海ロックダウンや自動車減産の影響を受けた減少があり、売上高は前年同期に比べ76億4,100万円の増収となった。利益面では、交易条件が悪化したほかスペシャリティー化進展のためのコストの増加もあり、営業利益は前年同期比28億4,500万円の減益となり、経常利益は前年同期比23億7,300万円の減益、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比18億1,900万円の減益となった。

セグメント別の概要は以下の通り。

電子・先端プロダクツ部門

球状アルミナの販売はxEV関連で一時的な減少があったが、5G関連やデータセンター向けが堅調に推移し前年を上回った。また、高純度導電性カーボンブラックは販売価格の改定により増収となり、電子部品・半導体関連分野向け高機能フィルムや球状溶融シリカフィラーの販売は概ね堅調に推移した。一方、自動車産業用向けの金属アルミ基板「ヒットプレート」やLED用サイアロン蛍光体「アロンブライト」の出荷は前年を下回った。

この結果、電子・先端プロダクツ部門の売上高は218億5,400万円(前年同期比8億8,500万円、4.2%増収)となったが、営業利益は、増産体制構築に関わるコストの増加などがあり、40億7,000万円と前年同期に比べ2億9,300万円(6.7%)の減益となった。

ライフイノベーション部門

新型コロナウイルスの抗原迅速診断キット「クイックナビ ™ -COVID19Ag」の販売は、価格は保険点数引き下げにより下落したが、地方自治体を通した高齢者施設や教育機関などへの供給や家庭でのスクリーニング検査向けなど、需要の裾野が拡大し前年を上回った。その他の試薬の販売は前年並みとなった。

この結果、ライフイノベーション部門の売上高は64億400万円(前年同期比4億3,500万円、7.3%増収)となり、営業利益は5億1,200万円と前年同期に比べ1億7,900万円(53.9%)の増益となった。

エラストマー・インフラソリューション部門

クロロプレンゴムは需要が堅調に推移したほか、販売価格の見直しを行い増収となり、肥料の販売も前年を上回った。このほか、特殊混和材の販売は概ね前年並みとなったが、セメントは原燃料価格の上昇に対して価格転嫁が一部にとどまった。

この結果、エラストマー・インフラソリューション部門の売上高は303億9,400万円(前年同期比58億3,900万円、23.88%増収)となり、1億8,700万円の営業損失(前年同期は営業利益5,200万円)となった。

ポリマーソリューション部門

スチレン系製品は原燃料価格の上昇に応じた販売価格の改定を行った。数量面では、デンカシンガポール社のMS樹脂は、テレビやモニターの需要減があったが生産能力を増強したことから前年を上回った。ABS樹脂や透明樹脂は自動車減産や中国経済減速の影響を受け減少し、スチレンモノマーは定期修繕を実施したことから出荷減となった。このほか、食品包材用シートおよびその加工品は概ね前年並みとなり、合繊かつら用原糸「トヨカロン」の販売は前年を下回った。

この結果、ポリマーソリューション部門の売上高は316億3,000万円(前年同期比1億2,000万円、0.4%減収)となり、1億2,100万円の営業損失(前年同期は営業利益25億6,600万円)となった。

その他部門

YKアクロス株式会社などの商社は、取扱高が前年を上回った。

この結果、その他部門の売上高は40億8,600万円(前年同期比6億100万円、17.3%増収)となり、営業利益は5億9,000万円と前年同期に比べ1億5,200万円(34.9%)の増益となった。

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