蜜出さない花とハチの「密」な関係 奄美大島の固有種「アマミエビネ」 受粉・繁殖の生態解明 熊本大准教授、7年の研究成果

アマミエビネの花弁に口先を差し込むオキナワヒゲナガハナバチ(杉浦直人准教授提供)

 絶滅危惧種で奄美大島の固有種「アマミエビネ」がオキナワヒゲナガハナバチの働きで受粉し、繁殖する生態が明らかになった。熊本大学大学院先端科学研究部の杉浦直人准教授(受粉生態学)が発表した。

 杉浦准教授は2021年3月までの7年間、奄美大島で野外調査した。アマミエビネが蜜を出さないにも関わらず、昆虫に花粉を運んでもらう「虫媒花」と確認。ハチが花弁の管状部に口先を差し込む際、顔に花粉の塊を付け、別のアマミエビネのめしべ柱頭に触れることで受粉すると突き止めた。

 ハチはアマミエビネが生息する森の地面に穴を掘り、巣を作ることも確かめた。森に蜜源となる植物がないため、近くの道路などに生える花の蜜を餌にしていた。

 このハチが多い年ほどアマミエビネも実を結ぶ傾向があり、杉浦准教授は「森だけでなく、餌場となる近辺の環境を守ることが、アマミエビネの保全につながる」と話した。

 アマミエビネはラン科で暗い森の地面に生える。高さ25~50センチの茎に白やピンクなど直径2.5センチほどの花を付ける。

花粉の塊を顔に付けるオキナワヒゲナガハナバチ(杉浦直人准教授提供)
奄美大島の森に生えるアマミエビネ(杉浦直人准教授提供)

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