リモート対応で明暗を分ける 「スポーツ・健康教授業」は6割超が「コロナ」関連倒産 ~2022年上半期(1-6月)「習い事教室の倒産動向」調査~

  2022年上半期(1-6月)の「習い事教室(教養・技能教授業)」の倒産(負債額1,000万円以上)は17件(前年同期16件)で、年上半期としては4年ぶりに増加した。「新型コロナウイルス」関連倒産は6件(構成比35.2%、前年同期5件)で、長引くコロナ禍で資金繰り支援効果が薄れ、息切れ倒産も出始めた。

 「習い事教室」の倒産は、少子化や習い事の多様化などから上半期としては2018年上半期以降、20件を上回っていた。その後、コロナ関連支援の資金繰り支援が奏功し、2021年同期からは10件台にとどまった。だが、長引くコロナ禍で支援効果は薄れ、2022年同期は4年ぶりに前年同期を上回った。
 「新型コロナ」関連倒産の6件のうち、5件は器具やスペースが必要で、リモート対応も難しいスポーツ教室、パーソナルジムの「スポーツ・健康教授業」だった。一方、前年同期は「新型コロナ」関連倒産が3件発生した「音楽教授業」の発生はなかった。
 習い事教室は、リモート対応など新しい生活様式に順応できた業態と対応が難しい業態との間で明暗を分けた。
 原因別は、『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)が14件(前年同期13件)で、構成比では約8割(82.3%)を占めた。コロナ禍で痛手を受けた対面接触型サービス業の教室・パーソナルジムでは落ち込んだ受講者の回復が課題になっている。
 形態別は、消滅型の破産が16件(構成比94.1%)で、再建の厳しさも浮き彫りになった。
 「習い事教室」は小・零細事業者が多く、業績回復が遅れるなか支援の縮小やゼロ・ゼロ融資の返済が始まった事業者が多く、今後、倒産は増勢に転じる可能性が高まっている。

  • ※本調査は、日本産業分類の「教養・技能教授業」(「音楽教授業」「書道教授業」「生花・茶道教授業」「そろばん教授業」「外国語会話教授業」「スポーツ・健康教授業」「その他の教養・技能教授業」)の2022年上半期(1-6月)の倒産(負債額1,000万円以上)を分析した。

上半期「習い事教室」の倒産は17件、「新型コロナ」関連倒産が3割超

 2022年上半期の「習い事教室」の倒産は17件(前年同期16件)だった。4年ぶりに前年同期を上回ったが、2年連続で10件台にとどまった。
 月次倒産は、2月(4→1件)、3月(4→2件)、4月(3→1件)と前年同月を下回った一方、1月(1→4件)、5月(4→8件)、6月(ゼロ→1件)は増加し、一進一退の状態にみえる。
 7月に入り新型コロナの新規感染者数が急増し、“第7波”の収束がまだみえない。こうしたなか、コロナ関連の支援効果は希薄化が進んでいる。「習い事教室」は小・零細規模の事業者が多いだけに、コロナ禍の出口戦略を見据えた新たな支援も必要な時期を迎えている。

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業種別 「スポーツ・健康教授業」が8件で最多、コロナ関連は6割超

 業種別では、スポーツ教室、パーソナルジムなどの「スポーツ・健康教授業」が8件(前年同期比33.3%増)で最多だった。このうち、「新型コロナ」関連倒産は5件(構成比62.5%)で、感染対策やリモート授業の難しさを浮き彫りにした。
 次いで、「その他の教養・技能教授業」が4件(前年同期6件)、「外国語会話教授業」が3件(同1件)、「音楽教授業」(同3件)と「書道教授業」(同ゼロ)が各1件だった。
 コロナ関連支援で倒産は低水準で推移するが、長期化するコロナ禍で変化した新たな生活様式は定着した格好だ。「スポーツ・健康教授業」のような対面型の習い事は、感染リスク回避からコロナ前の受講生数への戻りは鈍く、倒産の増加に繋がったとみられる。

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原因別 「販売不振」が最多の12件

 原因別では、最多が「販売不振」の12件(前年同期比7.6%減)だった。倒産に占める構成比は70.5%で、前年同期の81.2%より10.7ポイント低下した。
 次いで、「事業上の失敗」(前年同期2件)と「既往のシワ寄せ」(同ゼロ)が各2件、「運転資金の欠乏」が1件(同ゼロ)だった。
 『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は14件(前年同期比7.6%増)で、構成比は82.3%(前年同期81.2%)だった。

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