人の背丈を超える濁流…のどかな集落一変 大雨被害の福井県南越前町赤萩、復旧作業が本格化

川が氾濫し、家屋の倒壊や浸水の被害が出た福井県南越前町赤萩集落=8月10日午後4時半ごろ

 人の背丈を超える濁流が押し寄せ、家財道具はほとんど流された―。福井県南越前町河野地区の赤萩集落は、河野川の上流部から大量の流木や土砂が押し寄せ、のどかだった風景が一変した。8月9日夜に集落につながる国道305号の通行止めが解除され、復旧作業が本格化している。

 「お父さん、もうあかんわ。早く帰ってきて」。5日早朝、仕事に出かけた男性(61)が妻から連絡を受けたのは午前8時50分ごろだった。「とにかく2階へ上がれ」と伝え、急いで自宅に戻った。1階の床は泥だらけ。テレビや冷蔵庫、仏壇など多くの家財道具が水に漬かった。

 男性区長(63)によると、12棟が床上浸水、6棟が床下浸水の被害を受けた。「川がどんどん増水して両岸から水があふれ、背丈以上の濁流が集落をかき混ぜた。車や小屋が流された家もある」。新型コロナウイルス禍で地域の集まりが難しくなる中、12日に区の総会を開く予定だった。「総会は延期となったが、団結して災禍を乗り越えたい」と力強く語った。

 区長によると、住民の多くは日中に復旧作業に当たり、夜は親戚や知人の家などに身を寄せている。区として町に対し、臨時の生活拠点を用意するよう要請しているという。

 南越前町の各被災地では10日も多くのボランティアが入り、家財道具の搬出や床下からの泥出などの作業に当たった。赤萩には22人が入った。

 赤萩では11、12日は災害ごみなどの搬出が集中して行われるため、両日の町河野事務所でのボランティア受け付けを中止する。13日から再開する。

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