<南風>勉強

 「宿題やった?」と言われると「今やろうと思ってたのに」と母との毎度の会話。たくさんの図鑑や参考書も買ってもらい、ページをめくると鮮やかな写真やカラフルな字はワクワクして見ているだけで楽しかった。あくまでも見ているだけで実情は遊びに夢中だった。

 中学になると勉強についていけなくなり、反抗期のため学校の勉強なんて何にも役に立たないなんて強がっていたが、一夜漬けはよくやっていた。

 特に暗記するような社会が苦手だったが、先生が「ちゃんと覚えなくてもいいよ。これに書かれていたかな?ぐらいでいいから」と言ってくれ、気持ちが楽になった。点数は取れなかったが、その言葉のおかげで調べるとか、ひもとくとか、そういう過程が面白くなり、文章の中に答えのある国語も、必ず解ける数学も楽しくなっていった。

 どちらかと言うと苦手だったのは勝負するという部類の体育だったが最近ゴルフを始めた。運動センスのないことを言い訳に、なかなかスコアを上げられない。一緒に周っている人を観察していると集中して丁寧にスタンス、ボールの位置、グリップの握りなどを修正している。

 その時、体育ではなく図画の時間を思い出した。イメージや下書きは上手にできるが色付けするまでの長い工程に集中できず、残念な画になっていたことに「そうだ、私に足りないのは丁寧さだ」と気付いた。図画はゴルフとは異なるが「三つ子の魂百まで」という言葉を思い出し、自分自身が変わっていないことを知って笑ってしまった。

 学生の頃は自分のために必要だと思っていなかった一つ一つの勉強が、自分のためだったことに大人になって気付く。今後半世紀、いろんなことに挑戦し、知らないを知るという本能が満たされる気づきのある勉強を楽しんでいこうと思う。

(澤岻千秋、御菓子御殿専務取締役)

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