平和の礎 岡山県15人刻銘漏れ 船員軍属、沖縄県に追加申請へ

岡山県出身者らの刻銘が刻まれる「平和の礎」の一部=糸満市・平和祈念公園(南埜安男さん提供)

 太平洋戦争末期の沖縄戦で亡くなった人らの名を刻む「平和の礎(いしじ)」(沖縄県糸満市)に岡山県出身の船員軍属15人の刻銘漏れが判明し、岡山県が追加刻銘を沖縄県へ申請する方針を固めたことが12日までに分かった。岡山県内でまとまった人数の刻銘漏れが確認されるのは初めてで、認められれば沖縄の戦没者追悼式が行われる来年6月にも追加刻銘される見込み。

 刻銘漏れの調査を進める那覇市のボランティア南埜安男さん(57)が、知人を通じ今年3月に県へ情報提供。南埜さんの調査では少なくとも全国で約400人、県内では15人が漏れていたという。県は県遺族連盟と協力し、15人を沖縄戦関連の戦没者と確認。同連盟が追加申請を望む意向を示したため、毎年9月ごろに実施される沖縄県の追加刻銘調査に合わせ、申請作業に着手する。

 刻銘漏れが判明したのは当時、輸送目的で軍に徴用された民間船の乗組員らで、沖縄県を含む南西諸島周辺で亡くなっていた。大半の遺族は消息不明となっているが、同連盟の増本信行事務局長は「刻銘が戦没者の慰霊と顕彰につながり、戦争の悲惨さを改めて考える契機となってもらえれば」と話す。

 平和の礎は、沖縄戦最後の激戦地だった糸満市摩文仁(まぶに)の平和祈念公園にある石碑。1995年に建立され、沖縄戦などで亡くなった24万1686人(今年6月時点)の名前が国籍や民間人、軍人の区別なく刻まれている。沖縄県外出身者の刻銘は各都道府県から提出される名簿に基づく。

 現在、岡山県出身者の刻銘は1838人。県保健福祉課は「これまでも遺族や関連団体の指摘で数件の追加刻銘を申請してきた。今後も戦没者の追加刻銘に協力していきたい」としている。

 2021年12月には、広島県も南埜さんらの情報提供を受け、同県出身の船員軍属39人を追加刻銘するよう沖縄県に申請している。

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