野球の夏

 同じ発見をしてニヤリとした人がきっとどこかにいるはず、と信じている。大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手がベーブ・ルースに肩を並べる「2桁勝利・2桁本塁打」の偉業を成し遂げたのは米国時間の8月9日。日付が「ヤキュウ」「白球」と読める▲3回続いた足踏みがこのためだったはずはないけれど、日本から声援を送る私たちには何だかうれしい巡り合わせだった。2日遅れで盛大な拍手▲主戦投手と中軸打者の一人二役が「恵まれた」では言い尽くせない素質と「徹底的な」では足りない努力や自己管理の上にあるのは言うまでもない。それなのに、グラウンドの大谷選手がただ楽しそうにしか見えないことにいつも驚く▲夏の甲子園。初戦を大勝で飾って、昨日2回戦に臨んだ長崎県代表の海星高も楽しげな様子では負けていなかった。最初のストライクから果敢に狙う積極的な打撃で試合の主導権を握る。「ストライク」は“打てるよ”のコール。好球必打は野球の鉄則だ▲憧れの聖地で、照明灯のカクテル光線が選手たちを明るく照らす。終盤のピンチで超美技が飛びだした。捕ったばいっ。他の誰より自分がびっくり…そんな笑顔が弾けて▲大谷選手の記録の上書きはこの先も続き、海星高は3回戦進出。野球好きの夏がまだまだ終わらない。(智)


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