8月5日に福井県南越前町を襲った大雨被害により最後まで断水が続いていた同町鹿蒜(かひる)地区の大桐集落で14日、水道が復旧した。最大17集落1093戸に及んだ同町内の断水がすべて解消され、家屋の片付けや生活に求められてきた水道がようやく確保された。日常を取り戻せないまま旧盆を迎えた被災集落では、流された墓を前に失意に暮れる住民の姿が見られた。
鹿蒜地区は、水管橋や送水管の損傷で断水。県道の橋の崩落などで車両が入れなかった大桐集落は、水道の復旧にも時間を要していた。被災後に建設した県道の迂回路に沿って仮設管の設置工事が進められ、14日午後4時過ぎに集落内14世帯に水が届いた。艸分英治区長は「トイレが使えないのが一番大変だった。ようやく水が来て、みんな喜んでいる」とひとまず安堵した様子だった。
県などによると、同町の断水は、堺・鹿蒜地区の計226戸、今庄・湯尾地区の計830戸、赤萩集落の37戸で発生。7日から順次復旧した。
同町上新道の実家が床上浸水した越前市の72歳男性は、近くにあった先祖代々の墓が土砂崩れで流され、約3メートル下の道路脇に落下。毎年お盆に続けてきた親族での墓参りができなくなった。泥にまみれて倒れた墓石を見つめ「影も形もなくなってしまった。ここで再建は無理だと思う。親族で話し合って移転しないといけない」と肩を落としていた。
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町内の被災地は14日未明、5日の大雨被害以来となる強い雨に見舞われた。艸分区長は「また雨が降ると道が崩れるなど2次災害の不安がある」と警戒し、「安全に気をつけながら、ボランティアの皆さんの力を借りて復旧を進めたい」と話した。
5日に浸水被害に遭った同町河野地区の赤萩集落では、住民や親戚、町社協職員ら計約150人が、側溝に再びたまった泥をさらい、家屋の泥出しなどの作業に精を出した。