没後45年、エルヴィス・プレスリーの遺作となったシングル「Way Down」  偉大過ぎる影響力と存在感、2022年話題の音楽映画「エルヴィス」にも注目!

Way Down / Elvis Presley

アメリカが生んだスーパースター、エルヴィス・プレスリー

エルヴィス・プレスリー―― この名を聞いて皆さんはどんなイメージを抱くのだろう。

大衆音楽史上アメリカが生んだ最大のスーパースター、最大のアイドルだったエルヴィス。その功績と音楽界に与えた影響はあまりにも大きいが、全盛期(1950年代後半~1960年代)からおよそ半世紀、没後45年という時間が経過した今、ほとんどの人にとって漠然とした “ロックンロール時代のスター” というイメージが残っているのかもしれない。

また、2022年音楽映画では最大の話題となった『エルヴィス』、彼の業績風化防止という意味でも、このタイミングでの公開は結果的に絶妙だったようだ。

もはやエルヴィス・プレスリーの全盛期を知るのは少なくとも70歳代以上、60歳代以下の人々にとっては “過去のシンガー” あるいは彼の死後にその数多なヒットソングを知るということになる。かくいう筆者(1962年生まれ、59歳)もエルヴィスとの邂逅は中学生時、新たな “ロックスター” が次から次へと出現した激動の1970年代だった。

70年代中盤、オールディーズ系復活で登場したエルヴィスのヒットソング

ビルボードチャートを毎週紹介する「全米トップ40」をチェックしだした1976年(中学2年)、新曲として「心の痛手(Hurt)」(最高位28位)、「ムーディ・ブルー」(最高位31位)がチャートイン、“現行アーティスト” たるエルヴィスとの初対面だ。

もちろんおおよそ1970年代以降のエルヴィスは、いわゆる “昔の名前で出ています” 的なスタンスの中ヒットソングを残しており、正直時代をけん引するアーティストという立ち位置にいたわけではない。1976年といえば「ハートブレイク・ホテル」でブレイクしてからちょうど20年後、(1960年代に活躍した)ビートルズの解散からも既に6年が経過していたわけで、目まぐるしいポップシーンを追う中学2年生にとってのエルヴィスは、大昔の大スターというイメージ、それ以外のなにものでもなかった。

幸いにも70年代中盤に、往年の(オールディーズ系)ビッグスターの突発的な復活という現象が起こり(ビートルズ、ビーチ・ボーイズ、ニール・セダカ、ポール・アンカ等)、エルヴィスの主なヒットソングが恒常的にラジオで耳にできたという追い風があったのは大きかったかもしれない。

最後のミリオンセラーシングル「ウェイ・ダウン」

そして1977年8月、悲劇と言えるようなニュースが世界を駆け巡った。エルヴィス・プレスリー突然の死だ。1977年8月16日エルヴィスが亡くなった時点で、気合の入った新曲「ウェイ・ダウン」が31位(8月13日付)小ヒット中、ピークを迎えていた。翌週(8月20日付)47位のトップ40圏外、翌々週53位(8月27日付)と、この曲はこのまま "Hot 100" から消えてゆくのかと思われた矢先… 死の影響によるラジオオンエア / セールスの伸びで9月3日付のチャートにおいて35位へと上昇、再びトップ40入りを果たしたのだ。

湯川れい子氏の渡米レポート含め、アメリカ全体がこの稀代のスーパースターの死を悼み、(結果として)遺作となった「ウェイ・ダウン」を一丸となって応援しているのが、「全米トップ40」を通してひしひしと伝わってきた。最終的に「ウェイ・ダウン」は18位まで上昇、なんと「バーニング・ラヴ」(1972年2位)以来5年ぶりそして最後のミリオンセラーシングルとなった。

カントリー・シンガー、ロニー・マクダウェルによる即席追悼ソング「キング・イズ・ゴーン(The King Is Gone)」(1977年13位)の大ヒット含め、こんな稀有なチャートアクションから、極東の一中学生はエルヴィス・プレスリーの筆舌に尽くしがたい偉大さをその身に刷り込まれたわけだ。

2022年の音楽映画「エルヴィス」で描かれた姿

アフロ・アメリカンが生み出したロックンロール(R&B)をごく自然な流れで体現したエルヴィスの姿は、映画の中でもきちんと描かれている。彼が残した多くの革新的なレパートリー、そして音楽的初期衝動を備えたパフォーマンスの遺志は、今なお世界のあらゆるところで継承されているはずだ。

エルヴィス・プレスリーこそが、大衆音楽の表現者から最もリスペクトを得るべき存在であることを、没後45年経った夏に、あらためて痛感する。

カタリベ: KARL南澤

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