<南風>成長とは

 今回は少し私自身のお話をさせていただこうと思う。私は東京生まれで、大学は北海道で学び、獣医師を目指した。お世辞にも真面目な学生ではなかったが、無事に獣医師になることができたのが2008年。最初の就職先は、農林水産省というお堅い国の組織を選んだ。

 当時の私は、獣医師として動物を救うというよりは、国を救うことに信念と闘志を燃やしていた。今思うと若気の至りだが、当時は真剣にそう考えていた。というのも、当時、BSE(いわゆる狂牛病)や鳥インフルエンザが流行した直後であった上に、動物を介した人への感染症(人獣共通感染症という)が世界中で散発しており、国際機関で働きたいと強く思っていた。

 そのための近道として国の機関で働くことを選んだ。しかし、現実はなかなか厳しく、私があまりにも膨らましすぎていた妄想はもろくも崩れ去ってしまった。今思えば、何くそと踏ん張り、努力する気概がただ足りていなかっただけなのだが、当時の私はその気概もなく、早々に2年で自分の夢を諦めたのである。

 先日、今でも国で働いている同期に久しぶりに会った。彼と話していて、やっぱり少しうらやましくなった。当時の私は精いっぱい、仕事に向き合っていたとはいえず、少しの後悔がそこには確かにあった。

 今年4月に、新入社員として入社した方々も、さまざまな理想と現実のギャップに苦しんでいると思う。でも少し考え方を変えてみてほしい。自らの置かれている境遇が惨めなものと捉え、努力を惜しめば、それは未来の後悔につながる。

 それよりも、まだまだ成長の伸びしろは無限大に広がっていると捉えて、目の前のことに本気で真剣に取り組んでみるといい。少しずつ見える世界は変わってくるはずだ。

(周本剛大、琉球動物医療センター院長 沖縄VMAT隊長)

© 株式会社琉球新報社