海星2年の田川一心と平尾幸志郎は、同じく海星で同級生だった父親たちが立てなかった甲子園に挑んだ。この日、3回戦で敗れて「自分のミスのせい」(田川)、「悔しさしかない」(平尾)と号泣したが、1回戦からそろってスタメン出場。聖地で精いっぱいのプレーを見せた。
小学1年の時、ともに長崎南リトルで白球を追い始めた。かつて海星の主将、副主将だった平尾の父・吉隆さん、田川の父・直秀さんが監督、コーチを務め、全国準優勝も果たした。「お父さんがいなければここまで野球を好きになっていない」「恩返しがしたい」-。仲間でありライバルで、家でも競うように親子でティー打撃に励み、中学も一緒に長崎海星シニアの主力として成長した。
高校入学後も早い段階で存在感を発揮。海星中から2人を見てきた3年の森誠太は「生意気だけど、野球ではいい意味でガツガツ来てくれて頼もしい」。下級生といえどグラウンドではプレーも言動も遠慮しなかった。平尾は父だけではなく、昨夏の長崎大会準決勝で敗れたOBの兄・聡一郎さんのグラブも引き継いで夢舞台へ乗り込んだ。
「小さいころから厳しくやってきたのに、よく嫌いにならなかった。面と向かっては言えないけれど、ありがとう」「かなえられなかった夢を実現してくれて感無量」-。父たちはこう感謝する。
ただ、今回は「3年生に連れて行ってもらった甲子園」だったと痛感した。この日、2番・三塁手の田川は失策後の四回に途中交代。6番・左翼手の平尾は二回に二盗を決めて先制点に絡み、七回にも安打を放ったが、九回は連打で盛り上がっていた好機で凡退した。
先輩たちは格好良かった。もう一緒にできない悲しさ、貢献できなかったふがいなさが押し寄せて涙があふれた。そんな中、3年生は「おまえたちは泣かんでいい。来年がある」と励ました。
「この悔しさは絶対に忘れたらいけない。あと1年間毎日、言い聞かせていきたい」(田川)、「今度は自分たちが頼れる存在になって、必ず、ここに戻ってくる」(平尾)。固く誓った。
海星、逆転負け “感謝と悔しさ”胸に刻んだ夏 2年の田川と平尾 父が立てなかった聖地でプレー
- Published
- 2022/08/16 11:15 (JST)
- Updated
- 2022/08/16 11:40 (JST)
© 株式会社長崎新聞社