梅毒の感染者が昨年比で激増、年間1万人突破か

 日本で、梅毒の感染が過去最悪ペースで広がっている。国立感染研究所が発表した最新の定期報告によると、今年の累計の感染者が8月7日までに全国で7013人となっており、年間で1万人を超える可能性が出てきた。

昨年同時期より約1.7倍、増加傾向止まらず

 国立感染症研究所では、感染症法で指定された疾患について類型に基づいた症例の集計把握を行い、毎週統計値を速報している。先日発表された8月7日までの集計によると、今年に入って全国の感染者は累計7013人。昨年同時期より約1.7倍と急増しており、このペースで感染者が増えれば年間1万人を突破する勢いだ。

 感染者数の集計値とは時点が違うが、今月3日までの数値を解析すると、感染者の性別は男性が67%、女性が33%。年代別では女性では30代までで75%を占める一方、男性では、20代が22.4%、30代が25.4%、40代が25.8%、50代が16.4%と、ほぼ世代に偏りなく広がっている。

 梅毒は性感染症に類型されており、病原菌である「梅毒トレポネーマ」に、主に性的接触で感染する。潜伏期間は最大6週間で、発症しても初期はいったん症状が軽快、またはなくなることもあるため感染者も気づかない間に周囲に広めてしまう可能性がある。

 症状としてはI期とII期、それ以降に分かれ、I期は感染した箇所にしこりか潰瘍があらわれる。治療せずとも数週間でなくなるため、やり過ごしてしまう人も多い。しかし治ったわけではなく、治療しなかった場合、再び数週間の潜伏期間を経てII期へと移行。今度は手のひらなど全身に発疹、粘膜のただれ、発熱、倦怠感などがあらわれる。こちらも数週間〜数ヵ月で治療せずともおさまる場合が多いが、ここでも放置してしまうと、次は髄膜炎や脳神経に悪影響を及ぼすなど深刻な症状が出てくる。極めてまれだが、10年以上放置してしまうと心臓や脳に深刻なダメージを負い、亡くなる場合もある。症状が現れては消えるため軽く思われがちだが、思い当たるところがある方は、症状の有無にかかわらず受診すべきだろう。

 なお、梅毒は抗生物質を症状の段階に応じて一定期間服用すれば治癒する。治療にそれほど身体的・金銭的負担がかかるわけではないので、その面でもおそれず受診することが必要だ。

画像:梅毒の病原菌「梅毒トレポネーマ」の電子顕微鏡写真(国立感染症研究所提供)

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