台風で校舎の屋根に穴が開いた朝鮮学校に支援の輪広がる

台風21号の襲来から1カ月半。強風で校舎の屋根が吹き飛ばされた城北朝鮮初級学校(大阪市旭区)では、業者や資材不足などで本格的な修繕のめどが立たず、正常な授業再開までにはまだ時間がかかりそうだ。(新聞うずみ火 矢野宏)

5年生の教室の天井に大きな穴が開いた城北朝鮮初級学校=大阪市旭区

2018年9月4日の台風急襲に備え、前日には大阪府下10校の朝鮮学校の休校が決まった。城北朝鮮初級学校では児童65人を送りとどけたあと、男性教師たちが下駄箱や掲示板、自転車などが吹き飛ばされないようロープで結んだり、朝礼台を教室に運んだりして不測の事態に備えた。

台風21号は、4日夕方には関西を通り過ぎたが、各地に大きな爪痕を残した。「校舎の屋根が飛んでいる」という緊急連絡を受け、車で駆けつけた高暢佑(コウ・チャンウ)校長(54)は学校の惨状を目の当たりにして言葉を失った。

男性教師や保護者と一緒に学校の外に飛び散らかっている屋根や倒木などを回収した後、校内の片付けにあたった。

2階建て木造校舎の屋根は、長さ25・5メートル、幅3・6メートルにわたって吹き飛ばされていた。2階には4~6年生の教室があり、天井は雨水を含んで今にも抜け落ちそうな状態で、特に5年生の教室では大きな穴が2カ所も開いていた。

2階の教室の床にたまった雨水は1階にも漏れ、幼稚園の教室も水浸し状態だった。

高校長は「これでは子どもたちを迎え入れられない」と、2日間臨時休校にした。

3日後に授業を再開したものの、教室は使える状態ではない。近くの北朝鮮初中級学校(大阪市東淀川区)に交渉し、3年生以下の低学年34人を受け入れてもらうことにした。合同学習は8日から15日まで続き、4年生以上は今も教室を使えないため、音楽室や図書室、理科室などで授業を受けている。

一日も早い改修工事をと高校長は願っているが、「人手がない。材料がないと言われ、修繕にも書かれない状況です」

さらに、高校長の悩ませているのが資金問題だ。

朝鮮学校がある自治体では補助金を支給していたが、大阪をはじめ各地で見直しの動きが相次いだ。学校法人「大阪朝鮮学園」(大阪市)に補助を実施していた府では、2011年度分からの補助金支給を打ち切り、市も同調した。

台風で天井に穴が開いた城北朝鮮初級学校=大阪市旭区

校舎補修のための公的支援はなく、自分たちで寄付を集めるしかないが、ほかの外国人学校に認められている寄付への税制上の優遇措置もない。

そんな中で、市職員組合や解放同盟、人権ネットワーク、さらには周辺の小中学校、幼稚園や保育園などから浄財が寄せられた。10月16日には東京の85歳の女性から現金書留が届いた。寄付金とともに添えられた手紙にはこう書かれていた。

「どの国の人であれ、困っている人を助けるのは当たり前。どの国の子どもも世界の宝」

ヘイトスピーチを危惧しながら日本人の善意に触れた高校長は「視野が広がった」と振り返る。

「この学校に通う子どもたちをりっぱな朝鮮人に育てる。地域に貢献できる人材に育成するというこれまでの思いをより一層強くしました」

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