「今でも思い出すのは辛いが、忘れられるのはもっと辛い」両親と妹を亡くした在日3世

日本航空123便墜落事故から30年以上が過ぎた。墜落した機体は事故の7年前に「尻もち事故」を起こしていたというが、事故原因は依然として不可解なままだ。(新聞うずみ火 矢野宏)

事故の状況について、慰霊登山のガイドを務めてくれた現職機長で日本航空乗員組合の芦澤直史さんが、プラモデルを使って説明してくれた。500メートル離れた南側の尾根が「U」の字にえぐられている。御巣鷹の尾根に墜落する直前、右の主翼がえぐったものだという。

事故から33年、初参加の慰霊登山=2018年11月

「機体は逆さまになって、時速500キロで激突しました。その際、上になった機体の後ろ部分がポッキリと折れ、スゲノ沢を滑り落ちたため、後部座席からの生存者がいたのです」

事故から2年後、当時の運輸省航空事故調査委員会は、事故原因について「機体後部の圧力隔壁が損壊し、客室内の高い気圧の空気が一気に押し出されたことによって垂直尾翼を吹き飛ばした。4系統ある油圧装置がすべて破壊されたことで作動油が流出し、操縦不能になった。事故機は1978年に大阪国際空港で起きた尻もち事故の際に圧力隔壁を破損。ボーイング社による修理が不適切なものであったことに起因している」と結論付けている。だが、芦澤さんは疑問を呈する。

「圧力隔壁が破損すると、客室内の空気が流れ出たことで機内は気圧が急激に低下します。急減圧が起こると、酸素マスクなしでは過ごせません。だが、ボイスレコーダーに残っている機長ら3人のパイロットの会話を聞くと、酸素マスクをつけていない。さらに、機内にはものすごい風が吹き上げ、濃い霧が発生する。温度もマイナス40度ほどまで低下するが、生存者は室内温度の低下、発生する強風や濃い霧を否定しているのです」

垂直尾翼が吹き飛んだ原因が内部からの圧力ではないとすると、外からの圧力ということになる。自衛隊機による誤射説もささやかれているが、芦澤さんは「フラッター現象」の可能性もあるという。

フラッター現象とは、旗が風ではためくように、空気抵抗によって起こる異常振動のこと。尾翼などがしっかりと固定されていなければ起こるという。

「事故後、日航がすべての機体を調べたところ、垂直尾翼や方向舵を留めるボルトが緩んでいたり、外れたりしている機体があったのです」

こうした指摘に対して、事故調は耳を貸そうとしなかったという。芦澤さんは「修理ミスが事故原因なら123便だけの問題になるが、フラッター現象が原因となれば、ジャンボ機すべての垂直尾翼の強度や整備が問題視される」とみている。

なぜ、救出作業が遅れたのかも含め、芦澤さんは「原因が究明されていない」という。「今後の航空機の安全のためにも、再調査するべきです」

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