「討論力を生かし、戦後最大の危機に命をかけて仕事をしたい」「今こそ地方重視や党員重視という維新の原点に」 日本維新の会代表選・候補者インタビュー 足立康史氏

選挙ドットコムは8月27日に行われる日本維新の会代表選に立候補した3名にインタビューしました。本記事では足立康史氏へのインタビューを掲載します。

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戦後最大の危機に命をかけて仕事をしたい。地方重視や党員重視を徹底的に訴える

Q: 今回の代表選に立候補した理由を教えてください。

日本が戦後最大の危機にあるからです。ロシアによるウクライナ侵攻が、日本政治を取り巻く状況を大きく変えたと思っています。また、もう一つは安倍晋三元総理の銃撃です。私は安倍氏と親しくさせていただき、尊敬をしていました。銃撃によって、政治や政治家は命がけだと痛感しました。さらに、とどまるところを知らない少子化もあり、内憂外患の両面で日本は戦後最大の危機なのです。

いまは自民党1強といえますが、自民党は67歳です。1955年の結党から67年経ち、還暦を過ぎているようなもので、いつまでも自民党だけというのはだめです。日本維新の会は10歳の小学生ですが、もっと党改革をして、飛び級をして、自民党だけに任せるのではなく我々が日本の柱として、いまのあり方に対してプランBをしっかりと示して政権を取っていくという政治をやっていかなければ、戦後最大の危機にある日本の未来をつくることはできないというのが立候補した「政治的な理由」です。

また「個人的な理由」は、安倍氏の銃撃事件を受け、政治家として命をかけて仕事をしたい、勝負をしたいと思ったことです。

Q: 今回の代表選にはどのような戦略で臨んでいますか。掲げている公約はありますか。

党改革と政策改革の両面があり、どちらも大事ですが、政策改革が必要な理由は日本が戦後最大の危機にあるからです。今までの日本維新の会の外交・安全保障政策も変えていかないといけないですし、今までの社会保障政策も変えていかないといけません。

日本維新の会は、地方で生まれた唯一の国政政党です。ほかの全ての既存政党は永田町で生まれました。これまでは、橋下徹氏や松井一郎氏が代表だったから「地方の首長が代表なのね」ということで、何もしなくても地方重視であるというメッセージが国民に伝わっていたと思います。しかし2人とも引退されることになり、今回の代表選からは、代表が地方の首長だったという強烈なメッセージがなくなるわけです。日本維新の会の今後を考えたときに、いまの体制では「維新らしさ」がなくなっていくと思いました。

自民党も立憲民主党も県連の代表は地方議員ですが、最も地方重視であるはずの日本維新の会は、地域総支部のトップが全て国会議員です。今回の代表選も、なぜ国会議員が先頭に立って行われているのでしょうか。私が立候補しなければ、維新らしさがなくなっていくと思いました。地方重視という原点に立ち、カリスマの2人ではなく組織自体を地方重視にすることによって、地方重視や党員重視という強烈なメッセージを出していきます。

今回の代表選も、推薦人は国会議員には頼んでいません。北海道から九州までの地方議員に推薦人になってもらうことで、代表選においても地方重視や党員重視を徹底的に訴えることで勝負していきます。

“闘”論力、そして永田町と霞が関を肌で知っていることが自分の強み

Q: 他の候補者と比べて、自身の特徴や強みは何でしょうか。

丁々発止の討論力です。日本維新の会の代表になるということは、党首討論をやるということです。党首討論で政調会長に「これ、どう言う?」と聞くことはできません。これからの代表は討論力が一番大事で、「討論」というよりも「“闘”論」ですね。その「闘論力」では誰にも負けません。

そしてもう一つあります。大国である日本の野党第一党を目指し、政権交代を目指すということが、どれだけ重いことかをわかっていない人が日本維新の会の中にも多すぎます。私は霞が関に21年身を置いて政治を横から見てきたので、日本の永田町と霞が関がいかに奥深く、政権を狙うということがいかに大変なことかを肌で知っていますが、党内には肌で知らない人が多すぎます。政権を狙うということがどういうことかを肌で知っている党内で唯一の国会議員ということも私の強みということです。

その2つは別々ではなく、私が予算委員会などで官僚、閣僚、霞が関の幹部と丁々発止の議論をし、成果を収めてこれたのは、やはり霞が関を知っているからです。私の討論力は単なるパフォーマンスではなく、霞が関と永田町、そして内閣というものを肌で知っているからこそ生まれたものです。

Q: 他の候補者にはどのような特徴がありますか。ご自身から見た印象を教えてください。

馬場伸幸氏は自身を「8番キャッチャー」とおっしゃっているように、裏方で党をまとめていくという、橋下代表時代の松井幹事長のような仕事は完璧にできると思います。むしろ、幹事長として党をまとめる力はピカイチだと思っています。

梅村みずほ氏は女性目線ということで立候補されていて、多様性という点では、私や馬場氏では発信できないメッセージを持っていると思います。

梅村氏のダイバーシティ、多様性のような新しい価値観は大事だと思いますが、どうやって実現するのかが重要になってきます。閉鎖的な永田町とか、夜の国対政治で物事が決まっていくような文化が、若者や女性の進出を妨げています。若者を引っ張り上げるとか、女性をクォータ制で増やすような、形から入るのではなくて、永田町の政治文化自体を透明で公正・公平なものに変えていけば、力のある若者や力のある女性の議員が自然に増えていくと思っています。

いずれにしても、私が代表になったほうがよいということを申し上げておきます。

しがらみがないことが維新の原点。今こそ大阪でやってきた本当の改革を

Q: 他党と比べ、日本維新の会はどのような党だとアピールしますか。また「こうあるべき」という点があれば教えてください。

最大の特徴は、しがらみがないということです。旧統一教会の件を見てもわかりますが、日本維新の会は街頭演説をしてもそれほど人が集まりません。それは支援組織や支援団体が無いからで、一人ひとりの自立した個人が見てくださっているということです。それに対して既存政党は、財界・労働組合・宗教団体丸抱えです。自民党ですら、そうであったということがあらわになりました。

我々が企業・団体献金を禁止することで、本当にしがらみがないということを徹底していくことができれば、既存政党にはできなかった新しい政治、新しい行政を作ることができます。

ところが、国会の赤じゅうたんを踏むと、そうした原点を忘れてしまいます。日本維新の会の国会議員団は、企業・団体献金は受けないけれど、政治資金パーティーの企業売りはしてよいことになっています。文書通信交通滞在費は公開していると胸を張りながら、政策活動費という領収書不要の数千万円に及ぶ活動資金は必要だと言っています。

これまでの日本維新の会は、橋下前代表・松井代表というカリスマ的なリーダーの強いメッセージで「私たちにはしがらみがない」ということを国民の皆様にお伝えすることができましたが、この代表選を境に私たちは、トップのカリスマの力ではなくて、党のあり方や身を切る改革や政策提案などの「事実」を国民の皆様の目の前にお示しすることで、強烈なメッセージを伝えていく必要があります。そのためには、先ほど申し上げたような「抜け穴」、つまり言っていることとやっていることが違うという、政治家・政党として絶対にやってはいけない相違が今の国会議員団にはあるので、大阪でやってきた本当の改革を永田町でそのままやればいいのです。これを徹底的にやり抜いていけば、必ず飛躍できると確信しています。

参院選はギリギリ合格点。これからは個人ではなく党が強烈なメッセージを出すべき

Q: 7月の参院選をどう振り返りますか。日本維新の会が乗り越えるべき課題があれば教えてください。

60点だと思います。改選6議席から12議席を確保し、合計21議席ということで目標は達成したことになっているので、合格ではありますが、あと1点でも少なかったら不合格になったというくらいギリギリの、薄氷の合格だと思います。本当は80点100点と取っていかなければいけませんが、60点しか取れなかったので、私は極めて厳しい結果だったと執行部は反省しなければいけないと考えます。

具体的には、あれだけ優秀な候補者を擁立し、吉村洋文副代表に連日入ってもらった京都をはじめ、東京・埼玉・愛知・福岡という、いずれも勝てた選挙区で全敗を喫しました。これを選対本部や執行部がもっと重く受け止めて、このままではだめだということを強く意識すべきだと思います。いまの執行部はよく「地力が必要だ、だから来年の統一地方選挙を頑張る」と言ってますが、やはり政党は政党です。いくら地力といっても、竹と槍で選挙を戦ってくれというような竹槍政党で地力をつけるのは無理です。相手は60歳の還暦を過ぎた大政党の自民党、労働組合をバックにつけた野党第一党の立憲民主党ですから、それらを追い抜いていくためには党が強烈なメッセージを国民に伝える努力をもっとしなければいけません。橋下氏や松井氏の時代はそれがありましたが、これからは党が行う必要があります。つまり、「足立康史はすごい」というメッセージではなくて、「維新はすごい」というメッセージです。

今までは、「橋下さんはすごい」「松井さんは天才」「吉村さんはかっこいい」という個人のメッセージでした。例えば参院選では、吉村氏が応援演説をしているときは人だかりができましたが、候補者にマイクが移った途端にみんなが帰るということがいくつかの選挙区で起こりました。つまり、党にメッセージがないんです。大阪都構想が否決に終わったいま、単なる松井さん吉村さん頼みではだめで、一方で地力がないということで地方議員に責任を押し付けるのでもなくて、地方議員が胸を張って活動にまい進できるような政党としての強烈なメッセージを作っていかなくては、統一地方選の勝利も、野党第一党の獲得も、政権奪取もできません。

選挙ドットコムでは日本維新の会代表選候補者討論会を生配信します

今回インタビューした日本維新の会代表選の候補者3名の討論会を選挙ドットコムちゃんねるで19日21時より生配信します。こちらも併せてぜひご覧ください。

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