読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、39歳、会社員の男性。ペット可の賃貸マンションで犬と暮らす相談者。現在は結婚の予定もなく、犬中心の生活なので、将来に向けてペット可のマンションを購入すべきか悩んでいるそうです。FPの氏家祥美氏がお答えします。
犬がいるので、ペット可の賃貸に住んでいますが、このまま家賃を払い続けるか、マンションを購入するべきか迷っています。今のところ結婚の予定はありません。犬が趣味みたいなものなので、それ以外はほとんどお金を使いません。生活防衛費として、300万円を用意していて、それ以外(ボーナスも含む)は全てインデックス投資に入れている状況です。よろしくお願い致します。
【相談者プロフィール】
・男性、39歳、会社員、独身
・住居の形態:賃貸(神奈川県、一人暮らし)
・毎月の世帯の手取り金額:32万円
・年間の世帯の手取りボーナス額:55万円
・毎月の世帯の支出の目安:21万円
【毎月の支出の内訳】
・住居費:9万円
・食費:3万円
・水道光熱費:1万円
・通信費:1万円
・お小遣い:2万円
・その他:5万円
【資産状況】
・現在の貯金総額(投資分は含まない):300万円
・現在の投資総額:3,700万円
・現在の負債総額:0円
氏家:犬を愛するご相談者さんは、現在、愛犬とペット可の賃貸に住んでいます。現在39歳で当面結婚の予定はないということですが、ペット可のマンションを購入すべきか思案しているということでしたね。まずは、購入できるかどうか、家計の状況を確認していきましょう。
犬を愛するご相談者さんの家計をチェック
毎月の手取り月収は32万円、年間の手取りボーナスは55万円。手取り年収の合計は、32万円×12か月+55万円=439万円です。
一方、毎月の支出は21万円。内訳は以下の通りです。
住居費:9万円
食費:3万円
水道光熱費:1万円
通信費:1万円
お小遣い:2万円
その他:5万円
合計:21万円
住居費率が手取り月収の28%とやや高めで目立つものの、支出合計は手取り月収の65%に抑えられているコンパクトな家計です。さらに、ボーナスは年間55万円あるものの、ボーナスからの支出は無いため、年間の支出は21万円×12か月=252万円になります。
1年間を通してみると、439万円-252万円=187万円の貯蓄ができている計算になります。貯蓄率は43%です。収入に対して少し高すぎる気もします。この数字が正しければとても優秀な家計なのですが、ボーナス支出がなく、ペットを飼っているのにペット費もかかれていないところを見ると、ご本人も自覚していない使途不明金がある可能性もあります。念のため、確認しておきましょう。
家計が美しすぎると思ったら、使途不明金の有無をチェック
将来の家計を考えるうえで、美しすぎる家計は要注意です。本人も認識していない使途不明金がある場合、計算上の貯蓄額と、実際の貯蓄額に食い違いが出てくることがあります。この食い違いに気づかずにそのままライフプランを実行してしまい、あとから「こんなはずではなかった」となっては困ります。現実的な数字かどうかを確認しておく必要があります。
ご相談者さんの家計を、金融資産残高からチェックしてみましょう。39歳にして、貯金が300万円、投資が3,700万円、合計で4,000万円になります。投資による損益などを考慮せず、現在の残高4,000万円を仮に20歳から19年間で貯めたとした場合、1年あたり210万円を貯めたことになります。
この1年あたり210万円という数字を見る限り、現在の家計で187万円の黒字が出ていても不思議ではありません。一見美しすぎると思った家計ですが、数字は合っていると考えられます。愛犬にまつわる支出も、毎月の家計の「その他5万円」に含まれていると思ってよさそうです。
頭金あり、返済余力あり。住宅ローン減税を使って住宅購入を
39歳で現在の金融資産は4,000万円。現在9万円の家賃を支払いつつ、毎月11万円ずつ貯蓄をし、年間のボーナス55万円についてもすべて貯めている。このように考えた場合、ご相談者さんにとって住宅購入は無理のない選択です。いずれライフスタイルが変わったら売ったり貸したりすることも視野に入れつつ、住宅ローン減税を利用して物件を持つことを前向きに考えてみましょう。
神奈川県内でも希望するエリアや間取り、築年数などによって物件価格は大きく変わりますが、ここでは仮にペット可のマンションを4,000万円で購入した場合で考えてみましょう。
物件価格:4,000万円
諸費用(5%):200万円
合計:4,200万円
頭金:1,000万円
ローン:3,200万円
3,200万円を、金利1%で35年ローンを組んだ場合、1か月あたりの支払いは9万331円になります。現在の家賃と同程度ですね。マンションを購入する場合、このほかに修繕積立金や管理費がかかります。これもマンションの規模や修繕計画などによりますが、だいたい2万円程度でしょうか。
頭金1,000万円、金利1%で試算をしましたが、ご相談者さんの場合、家計に比較的余裕がありますし運用にも慣れているようですから、当初は頭金を少なめにして金利の低い変動金利で多めに借りておくのもよいでしょう。
住宅ローン減税の上限額は、新築か中古か、省エネ等に配慮した住宅かそうでないかによっても異なります。制度の範囲内で住宅ローン減税をフル活用しつつ、金利が上昇してきたら繰り上げ返済や固定金利への切り替えも考えていきましょう。
●現在の住宅ローン減税
控除率 年末ローン残高の0.7%
減税期間 新築は原則13年、中古は10年
愛犬との新しい生活を、物件探しから始めてみてくださいね。