“これぞインパル”の真っ向バトル制し、関口雄飛が3年ぶりの美酒。王者争いは野尻智紀がリードし最終決戦へ【SF第8戦決勝レポート】

 2022年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第8戦決勝(37周)が8月21日にモビリティリゾートもてぎで開催された。予選7番手からスタートした関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)が、ピットイン戦略が分かれたチームメイト平川亮の猛追をしのぎ切って今シーズン初優勝を飾った。平川は逆転優勝はならなかったものの、前日第7戦の雪辱を果たす2位表彰台。3位には今季2度目の表彰台となる牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が入った。

 まぶしいほどに強い日差しが戻ってきたもてぎ。8分間のウォームアップ走行では、ほとんどの車両がスタート練習を繰り返し、真夏の決戦に備えていた。予選でトラブルに見舞われ最後尾グリッドとなった笹原右京(TEAM MUGEN)はコースイン時刻にピットを出ることができなかったが、その後手押しでグリッドへ。また、いったんはグリッドに着いたもののトラブルが見つかりピットに戻したジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)は、修復後に隊列の後方に着いた。

 気温31度/路面温度は45度と、金曜日の専有走行に近い温度まで上がり、37周の決勝レースがスタート。見事なロケットスタートを決めたのはポールシッターの大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)。フロントロウのサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)はやや出遅れ、3番手スタートの野尻智紀(TEAM MUGEN)にかわされてしまう。

 その後方ではオープニングラップからcarenex TEAM IMPULの2台が激しいバトルを展開。5番手スタートの牧野を4コーナーまででかわした2台は、5コーナーから接触ぎりぎりの競り合いを繰り広げると、90度コーナーでアウト側から豪快なオーバーテイクを見せた関口が前に出る。しかし平川も負けじと、翌周同じ90度コーナーでやり返し、5番手ポジションを獲り返した。

2022年スーパーフォーミュラ第8戦もてぎ スタートシーン

 トップを走る大湯は、2周目には野尻に対して2秒のギャップを築いたものの、じわじわと詰められていく。8周目にはその差が1秒を切ったが、ここからは3番手のフェネストラズも含めて膠着状態に。

 10周目にピットウインドウが開くと、6番手を走る関口が上位勢では唯一タイヤ交換へ向かう。翌周には牧野、山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)、阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)、小林可夢偉(KCMG)がピットイン。さらにここで4番手を走っていた山下がピットに入ると、ガレージへと入れられてしまう。どうやらシフトトラブルのようで、残念ながら戦線離脱となった。

 タイヤ交換後の関口はペースが良く、タイヤ未交換組にすぐに追いついてしまうが、これもロスなくオーバーテイク。この時点で、トップを走る大湯とのギャップは26秒。関口はここから1分34秒台のラップタイムを連発。1分35秒台半ばで周回する大湯との差を約2秒ずつ詰めていった。

 15周目の終わりで、2番手野尻がピットイン。チームの作業も素早かったが、コース復帰のタイミングでは関口がわずかに前に出ることに成功する。野尻はアウトラップの4コーナーで牧野にもかわされてしまった。その翌周、大湯とフェネストラズは同時にピットイン。大湯は左フロントタイヤの交換に手間取ったものの、ぎりぎりのタイミングでフェネストラズの前でコース復帰する。しかし関口、牧野、野尻の3人には先行されてしまい、表彰台圏内からドロップしてしまった。

 ここからは、ピットインのタイミングを引っ張り見た目上のトップを走る平川と、実質トップを行く関口との見えない勝負に注目が集まる。関口に比べてタイヤを消耗しているはずの平川だが、2台はほぼ同じようなラップタイムで周回。両車の差は20秒前後で膠着したまま、レースは後半戦へと突入した。

 23周を終えるころになると、クリーンエアでペースを乱さず走れる平川が関口のラップタイムを上回り、少しずつ差は拡大。29周目に自己ベストタイムを更新した平川は、その翌周にピットへとステアリングを切った。

 スムーズなタイヤ交換後、平川は関口の後ろ、野尻の前でコース復帰に成功する。チャンピオンを争うふたりの直接対決は、すでにタイヤが温まっている野尻が1コーナーで平川の前に出たが、平川はフレッシュタイヤのパフォーマンスを見せつけ、32周目のヘアピンコーナーで接近すると、続く90度コーナーでアウト側から豪快なオーバーテイクを披露。これで関口、牧野に続く3番手に浮上した。

 しかし、平川の勢いは止まらない。最後までタイヤ交換を引っ張った分、誰よりもアドバンテージを持った状況で2番手の牧野にも一気に近づき、34周目の5コーナーで逆転。35周目に入るところでは、トップを走る関口との差もわずか0.5秒というところまで迫った。

 残り2周はチームメイト同士の真剣勝負。0.5秒差で迎えたファイナルラップでは、まず関口がオーバーテイクシステム(OTS)を作動させて逃げを打つ。追いかける平川は、相手のOTSが切れるタイミングを待って必死に食らいついた。ファーストアンダーブリッジに差し掛かったところで関口のOTSが切れると、今度は平川のOTSランプが点滅。一気にスパートをかけた。

 ヘアピンコーナーでテール・トゥ・ノーズにまで迫ると。レース序盤でも熱いバトルが繰り広げられた90度コーナーへ。平川はアウト側から並びかけてセカンドアンダーブリッジに入っていったが、わずかにタイヤがコースを外れマシンが揺さぶられてしまった。2台の勝負はこれで決着。ビクトリーコーナーに先に入った関口がそのままトップチェッカーを受け、今シーズン初優勝を決めた。

 関口は2019年の第2戦オートポリス大会以来、実に3年ぶりの勝利。平川が2位でワン・ツー・フィニッシュを飾ったcarenex TEAM IMPULは一気に35ポイントを加算し、チームランキングで2位に浮上した。牧野は今シーズン初の表彰台を獲得。この第8戦で優勝すれば最終戦を待たずにタイトル獲得の可能性もあった野尻は4位でフィニッシュ。フェネストラズと平川に大量リードを持った状態で最終鈴鹿大会に入ることとなる。

2022年全日本スーパーフォーミュラ選手権を制した関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)と星野一義監督

© 株式会社三栄