ニューガーデンがゲートウェイ連勝で王者争いは肉薄。琢磨は今季ベストリザルト/インディカー第15戦

 ワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイで開催されたNTTインディカー・シリーズ第15戦。20日に行われた決勝レースは、ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が終盤のリスタートで逆転し、今シーズン5勝目を挙げた。

 予選8番手からレースに挑んだ佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・リック・ウェア・レーシング)は、今季最上位となる5位でレースを終えている。

 2022年のインディカーも残すところ3戦となった。シリーズ第15戦が行われるのは全長1.25マイルのゲートウェイ。イリノイ州マディソンにあるコースはターン1・2側はバンクが11度でコーナー半径が小さく、ターン3・4側はコーナー半径は大きいがバンクは9度と緩やか、というユニークなもの。

 片側が速くなれば反対側が厳しくなるレイアウトで、毎年インディカーのレースはとても見応えのあるものとなっている。それは今年も例外ではなかった。

 予選ではウィル・パワー(チーム・ペンスキー)がポールポジションを獲得。これがマリオ・アンドレッティに並ぶインディカー史上最多タイのキャリア67回目だった。

 レースでもパワーはレース序盤のイニシアチブを握ったが、2回目のピットインを大幅に早めた佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)によってトップを奪われ、その後はレース展開、作戦ともに彼にとって裏目、裏目と出ていた。

序盤はウィル・パワーがレースをリード

 一進一退がありながらもトップグループにポジションを保ち続けたが、145周目にジャック・ハーベイ(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)のアクシデントで出されたイエロー中にピットインしたジョセフ・ニューガーデン、スコット・マクラフラン(チーム・ペンスキー)がレース終盤には優勝争いの主役となった。

 パワーと同様に王道のストラテジーで走ったために厳しい結果しか得られなかったのがパト・オワード(アロウ・マクラーレンSP)だった。彼らふたりは最終スティントでよりフレッシュなタイヤを履く面々に次々とパスを許す悔しい戦いの末にゴールすることとなった。オーワードは4位に踏みとどまったが、パワーは6位でのゴールとなった。

 勝ったのはニューガーデン。最終ひとつ手前のスティントでは若いチームメイトのマクラフランに先攻を許した。イン・アウト・ラップで最高のマシンコントロールを見せたマクラフランが先輩チームメイトからトップを奪い取ったのだ。

 しかし、赤旗中断後のリスタートでニューガーデンは一気に勝負に出た。残り36周でグリーンフラッグが振り下ろされると、そのラップのバックストレッチエンド、ターン3進入でマクラフランをパスしてみせ、一旦トップに立つやリードを広げた。

スコット・マクラフランと競るジョセフ・ニューガーデン

 トップに立ったニューガーデンは後続に期待を抱かせないように明確な差を築き、そこからはインターバルを調整しながらゴールを目指した。もうゴールまで10周……という辺りでルーキーのデイビッド・マルーカス(デイル・コイン・レーシング・ウィズHMD)がオーワードを抜いて3番手に浮上。

 2番手を走るマクラフランまで届くかは微妙と映っていたが、急接近を実現し、彼を最終ラップで抜き去った。

レース再開後、速さを見せるデイビッド・マルーカス

 マルーカスはデビュー15戦目にしてキャリア初の表彰台に上った。ニューガーデンに0.4708秒まで迫っての2位は見事な結果だ。ただし、ニューガーデンはアタックをしてくる者が現れた場合に備えてタイヤを温存する走りを続けていたため、あと数周あってもマルーカスがトップを奪い取るところまではいけなかった可能性が高い。

「最後のリスタートでは良い加速をすることに集中していた。なんとかギリギリでパスできた。素晴らしい夜、大きな意義のある夜となった。チャンスを得たら、必ず勝たないといけない。今日は何としてでも勝ちたかった。それを実現できたのだから、本当に嬉しい」

「あのリスタートで大きなチャンスが与えられた。チームメイトのスコット・マクラフランはとてもクリーンに戦ってくれた」とニューガーデンは勝利を喜んだ。逆転での三度目のチャンピオンシップ獲得が彼の視界には入っている。

 ゲートウェイでマルーカスは世間にその名を知らしめる素晴らしいパフォーマンスを披露した。ゲートウェイのあるイリノイ州シカゴ出身の20歳は今日の戦いぶりで多くのファンを獲得したに違いない。

 レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングで走るデンマーク出身ルーキーのクリスチャン・ルンガー(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)もインディアナポリスのロードコースで2位フィニッシュを一度記録しており、彼の方がシリーズポイントは11点多く獲得してきている。

 最終戦終了時により多くのポイントを手にしていた方が2022年のルーキー・オブ・ザ・イヤーとなるルールで、チャンピオン争い同様にこちらも熾烈なバトルとなっている。

「今日の自分たちのマシンは速いはずだとスタート前から確信していた。レースが進むに連れてどんどんマシンが良くなって行った。赤旗で中断している間には、“頼むからレースを再開してくれ”と祈っていた」

「中断で昨日のファイナルプラクティスと同じ時間帯までレースがずれ込んだので、自分たちのマシンはもっと速くなると考えられたから。実際、ライバル勢に比べ、温度の下がったコンディションでの自分たちのマシンは更に高いパフォーマンスを発揮していた」

「トップグループを走っていたベテラン勢はポジションの守り方も相手のラインのブロック方法も深く知り尽くしている。そんな彼らをパスするのはとても難しかった」とマルーカスは語った。

初めての2位獲得を喜ぶデイビッド・マルーカス

 3位はマクラフラン。4位はオワード。そして5位が琢磨だった。予選8位から6、7番手をキープして序盤戦を戦っていた琢磨は、レースが膠着状態に入ったために2回目のピットストップを予定より20周ほど早く行った。

 この作戦は見事に的中。コースの空いたところに出た彼はハイペースで走り、127周目にトップに躍り出た。快調に飛ばす琢磨は2番手以下に6秒以上の差をつけたほどだった。
 しかし、145週目にハーベイがクラッシュ。トップだったためにイエロー中にピットに入るか否かは非常に難しい選択となり、一瞬躊躇したためにピットタイミングがニューガーデンとマクロクリンより1周遅くなった。ここでのポジションロスが大きかったのと、トラフィック内での走りから琢磨は順位を戻していくのに苦労。5位まで順位を上げるのが精一杯となった。

「ゲートウェイでのレースはいつもエキサイティングなものになります。今年も同じでした。観客の皆さんにとってもファンタスティックなレースになっていたと思います。トップ5フィニッシュができ、とても喜んでいます」

「しかし、もう少し協力をして欲しいと感じた点もありました。数周の周回遅れであったのに、私たちに進路を譲ってくれないドライバーがいました。それがなければあとひとつかふたつ上位でゴールすることができていたと思います」

「チームメイトのルーキー、デイビッド・マルーカスが初めての表彰台に上りました。彼には心からおめでとうと言いたいですね。チームのふたりが揃ってトップ5フィニッシュできたのは、マシンの仕上がりレベルが高かったからだと思います」

「残る2レースもそうできるように、一度行うテストでマシンのセッティングを良くしたいと思いいます」と今季自己ベストの結果を残した琢磨はコメントした。

一時はトップを快走するもレース再開後はマシンバランスに苦しんだ佐藤琢磨

 ランキング2位でゲートウェイ入りしていたスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)は8位でゴール。ランキング3位だったマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)はそのひとつ前の7位となった。

 チャンピオン争いはトップのパワーと2番手のニューガーデンが僅か3点差。ディクソンはトップと14点差、エリクソンはトップと17点差とトップ4が小さな差の中にひしめいている。

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