大分トリニータ 昇格へのラストピース、金崎夢生がチームの起爆剤となる

金崎夢生が帰ってきた。青いユニフォームを身にまとい、13年ぶりにホームのピッチに立った。プロのキャリアをスタートした大分のファン、サポーターの期待を感じていた。いつになく緊張していたようだが、下平隆宏監督の「復帰戦なので楽しんでこい」との言葉で落ち着いた。32節・岩手戦に2トップの一角として先発出場し、交代するまでの64分間、前線で動き回り攻撃を活性化させた。「手探りだったが、コミュニケーションを取りながらプレーできた。ゴールという目に見える結果は出なかったが、コンディションが上がれば結果は出る。チームの起爆剤になりたい」と汗を拭った。

チームに合流して5日でピッチに立ったが、名古屋や鹿島など国内強豪クラブの他、海外クラブを渡り歩いた経験がある。「日本人なのでコミュニケーションは取れるし、これまで何チームも移籍した。試合に向けて、練習からイメージを共有できた」と積極的に話し掛け、互いのプレーの特徴を確認した。増山朝陽は「(金崎から)コミュニケーションをとってくれたので、なじみやすかった」と言えば、弓場将輝は「もっと『俺が俺が』という選手だったと思っていけど、プレーは献身的だし、親しみやすかった」と話す。

ただ、勝利に対する貪欲さは変わらない。プロ1年目から人一倍負けず嫌いで、誰よりもチームの勝利を追求する姿勢はそのままだ。勝つために必要とあれば、歯に衣着せぬ物言いで衝突を恐れない。試合後は「試合で課題が出るのはいいこと。次の勝利につながる」と浮かれた様子はなく、次の試合に向けて戦闘モードに入っていた。前所属の名古屋では出場機会に恵まれなかったが、「いつ試合に出ても大丈夫なように準備をしていた」と話すプロ意識の高い選手だ。自分の存在価値を示すのはゴールに絡む仕事であることは理解している。「次はゴールを決めたい」との言葉に力が入る。

個性の強い選手であるため、良薬にも劇薬にもなり得る。下平監督は「そういう風に捉われがちだが、大分でプロになって育った選手。チームにも思い入れがあると本人も言っている。良薬にしかならない」とパーソナルな部分も含めて受け入れている。「勝利に対する意欲が強い選手。おとなしいチームには、彼のようなパーソナリティを持った選手が必要」(下平監督)だったことは確かだ。昇格に向けて残り11試合。勝利への意欲と大分に対する思い入れの強いラストピースがハマれば、チームの勢いは加速するはずだ。

ラストピースがそろい、昇格に向けて気運高まる

(柚野真也)

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