豊田章男社長「エンジンの振動も排気音も残していきたい!」WRCファンの前で水素GRヤリスをデモラン

 8月19日から21日にかけて、ベルギー西部のイープルでWRC世界ラリー選手権第9戦『イープル・ラリー・ベルギー』が開催された。この大会期間中、TOYOTA GAZOO Racing WRTは、水素エンジンを搭載した実験的コンセプトカーであるトヨタGRヤリスH2のデモランを実施。20日には豊田章男社長も“モリゾウ”としてステアリングを握り、実際のラリーステージを走行した。同氏は同ラウンドの終了後に恒例のコメントを発表している。

 2019年にトヨタでドライバーズチャンピオンを獲得したオット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1)が、シーズン3勝目となる勝利を飾った今戦、トヨタはエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組が総合2位、エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム組(トヨタGRヤリス・ラリー1)も総合3位に入り“ダブル表彰台”を獲得した。

 一方、既報のとおり、この週末は連日トヨタGRヤリスH2コンセプトのデモンストレーション走行が行われており、初日のデイ1は元WRC4冠王者のユハ・カンクネンが水素エンジン車の走りを披露。翌20日のデイ2では、豊田TGRチームオーナーがカンクネンをコドライバーに迎えてSS11の直前にステージを走行している。

 最終日はふたたびカンクネンがドライブ。豊田氏はコドライバーとして助手席に乗り込み、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組がベストタイムをマークしたパワーステージ(SS20)の開始直前にステージを走行した。また、同氏はデモランの終了後、表彰式で選手たちを出迎え彼らの健闘を讚えた。

 そんな豊田氏がイープル・ラリー・ベルギー後に発信したコメントは以下のとおりだ。

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豊田章男 TOYOTA GAZOO Racingチームオーナー

まずは、メカニックたちに“ありがとう”を言わせてください。私がチームと合流する前、カッレとヨンネが横転したニュースが飛び込んできました。フィンランドの光景に似ていました。しかし、ドライバーがゴーグルをかけてもクルマは動きそうにありません。カッレの走りを見ることができないかと残念に思っていましたが、夜に『修理完了、明日お待ちしています』の連絡が入りました。カッレとヨンネのために、必死でクルマを直してくれたメカたちに感謝します。おかげで私も4台すべてを間近で応援することができました。みんなありがとう。

そして、今回、FIA、WRCプロモーター、オーガナイザーなど多くの方々のご理解とご尽力により“水素の排気音”をWRCファンの皆さまに聞いていただくことができました。モータースポーツもスポーツです。スポーツは五感が刺激されてこそ興奮が高まる……私は、そう信じています。だからこそエンジンの振動も排気音も残していきたい! カーボンニュートラルを目指しながらも、その興奮を残していくことを、ここヨーロッパでも多くの皆さまと共感し合えたことに、とてもうれしくなりました。皆さま、本当にありがとうございました。

本音を言えば、私もドライバーたちと一緒にポディウムに立ちたかった……。今回は少し離れたところから、エルフィン、スコット、エサペッカ、ヤンネに拍手を送りました。今年はもう一度、そこに立つチャンスが私にはあると思っています。今度は彼らと一緒にシャンパンでベトベトになりたいと思います。

チームのみんな、11月に日本でよろしくお願いします。(その前の3戦も勝ちましょう!)

追伸 オイットへ
優勝おめでとう! 2019年12月に君に送った「また表彰台で会おう。僕が君にシャンパンをかけるから」というメッセージを覚えてくれていますか? ベルギーでは叶いませんでした。なんとしても日本で!

豊田章男社長(中央)と表彰台を獲得したTOYOTA GAZOO Racing WRTの選手たち。左からヤンネ・フェルム、エサペッカ・ラッピ、エルフィン・エバンス、スコット・マーティン
WRC第9戦イープル・ラリー・ベルギーのステージで、デモランを実施したトヨタGRヤリスH2コンセプト

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