【おんなの目】 まだ縄文にいます

 五年前にAさんから「歴史を勉強しない?」と誘われた。Aさんの指導の下、四十六憶年前の地球から出発した。

 生命誕生、多細胞動物登場、五憶五百万年前のカンブリア紀へ。Aさんは、二億九千年前の石炭紀、恐竜のジュラ紀、巨大恐竜が衰退する白亜紀まで進んでいたが、私はカンブリア紀で停滞。トゲトゲの体のハルキゲニア。ナメクジみたいなピカイア等々。目を見張る面白さ。動けない。

 Aさんが「早くおいで」と言うので、仕方なくオダライアだけ抱えて彼女を追った。Aさんは、猿人からネアンデルタール人、ホモ・サピエンスがアフリカ大陸の外へと拡がって行く所まで学んでいた。私は人類が段々背骨がまっすぐになり直立していく変化のイラストに見入った。ある日、夕焼けの中を歩く高齢の男性と若い男性が信号で並んだのを見た。前屈みの老人。直立の青年。ああ、進化の形だと胸が熱くなった。

 Aさんは順調に近代まで到達している。ここで彼女は小休止。人の戦いの歴史に疲れたのだ。本を読む目と頁をめくる手が血生臭いと言う。

 私はまだ縄文時代。この時代は一万年も続き、個性的な土偶が数々作られている。私は多分、数年ここに留まり、縄文人に習いながら土偶を作ってみようと思っている。まずは、土こねから・・・。

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