救急搬送困難「受け入れの限界近い」 コロナ第7波で栃木県内医療機関

救急患者を診察室に運び込む救急救命士=19日午後、足利赤十字病院(足利赤十字病院提供)

 新型コロナウイルス感染の「第7波」で栃木県内の救急医療が逼迫(ひっぱく)し、救急患者の搬送先がすぐに決まらない「救急搬送困難事案」が増え続けている。第7波の入り口だった7月4日からの1週間は67件だったが、8月8~14日は161件に増加。うち74件がコロナ疑いだった。既に昨年度の救急車受け入れ台数を超えた医療機関もあり、一般救急にも影響が出ている。関係者は「受け入れの限界に近づいている」と危惧し、救急車の適正利用などを呼びかけている。

 救急搬送困難事案は本県を含め全国で増加。コロナ疑いの患者の搬送も7月4~10日の1週間は28件だったが、8月8~14日は2.5倍に増えた。コロナ患者の対応には人員と時間がかかるため対応できない医療機関が増え、患者の増加も影響しているとみられる。

 済生会宇都宮病院(宇都宮市)の救命救急センターでは今夏、コロナ感染疑いの高齢者が10回以上、搬送を断られ、より重篤な患者を診る3次救急の同センターで受け入れたケースがあった。

 同センターでは4月から8月中旬までに約2500台の救急車を受け入れ、既に昨年度の約7300台を上回るペースだ。2次救急を担う病院に搬送できず、受け入れた患者の転院調整にも時間がかかり、本来受け入れられるはずの一般救急患者を断らざるを得ないなど、悪循環に陥っているという。

 足利赤十字病院(足利市)の救命救急センターでも、1日当たりの救急車の受け入れ台数が増えた。医師の感染により緊急手術に対応できず、受け入れを断る事案も一時的に発生。コロナ病床を増やしているが、「これ以上は救急診療がまひする」と一般救急とのバランスに腐心する。

 県の入院医療調整本部で医療圏をまたぐ患者の移送などの調整役を担う済生会宇都宮病院の小倉崇以(おぐらたかゆき)救命救急センター長は、「1人の搬送が遅れることで、次の患者への接触が遅れて救命率に影響する事態が県内どこでも起きている」と指摘する。

 軽度な発熱で患者が119番するケースもあるという。県の相談窓口や地域の医療機関の受診を含め、「救急車の適正利用を心掛けてほしい」と訴えている。

一般の救急患者の搬送のため足利赤十字病院に到着した救急車=19日午後(足利赤十字病院提供)
県内の救急搬送困難事案件数の推移

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