ロシアによるウクライナ侵攻から半年「戦争の始まりは8年前のクリミア併合」

ロシアによるウクライナ侵攻から半年。紛争は長期化の様相を見せている。ウクライナ軍と東部の親ロ派勢力がにらみ合う前線を横断して撮ったドキュメンタリー「ウクライナから平和を叫ぶ」(2016年)が8月26日から大阪・シネリーブル梅田で上映される。「いまの戦争は8年間続いて戦争が第2の局面に移ったもの。その始まりを知ってほしい」というスロバキア人写真家のユライ・ムラヴェツ・ジュニア監督にオンラインで話を聞いた。(新聞うずみ火 栗原佳子)

ムラヴェツ監督は1987年生まれ。写真と映像を学び2010年からシベリア鉄道で旧ソ連の国々を旅し、人々の暮らしをカメラに収めてきた。13年にスロバキアの隣国ウクライナで起きた「ユーロマイダン」デモも取材した。

ウクライナ軍に拘束され拷問を受けた男性

翌14年、親ロシア派のヤヌコヴィッチ大統領が国外へ逃亡。ロシアがクリミア半島を併合した。さらにウクライナ東部のルハンシク州とドネツク州で親ロ分離派が独立を宣言、ウクライナとの紛争に陥った。15年、ムラヴェツ監督はドネツク州で撮影を開始。紛争の渦中で何が起きたのか住民たちに話を聞いた。ウクライナ兵にスパイと間違えられ暴行を受けて拘束された炭鉱夫、村に取り残されたおばあさんは「プーチンに助けてほしい」と訴えた。

16年、ドネツク州を再訪。しかし「NATO側のプロパガンダジャーナリスト」などと入国を拒まれた。ウクライナ側の取材に切り替え、マリウポリなどで住民たちにインタビューした。

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最前線の村で多くの人が死ぬのを見たおばあさん。恐怖に震える少女。教会で「みんなに平和を」と歌う人たち。一方、飼い犬のロシアン・スパニエルを「分離派の犬」と言われ憮然とする男性も。ウクライナ側とドネツク側。多種多様な証言が絡み合う。

おばあさんを思わず抱きしめる監督

今年2月のロシア侵攻。ムラヴェツ監督はすぐにウクライナに入り、撮影を重ねる。

「なぜこんなことが起きたのか理解できませんでした。残念ながらこの戦争によってウクライナ側の憎しみは数世代続くでしょう。21世紀ヨーロッパ最大の出来事だと思います。いまの戦争を理解するためにも8年前、どのように始まったかを知ってほしい」

9月2日からアップリンク京都など。全国で順次上映。

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