コロナ全数把握見直しに県内は… 負担減歓迎も課題指摘 どうする?届け出なし陽性者

新型コロナの対応に追われる保健所の職員=3日、諫早市栄田町の県央保健所

 岸田文雄首相が新型コロナウイルスの感染者の全数把握を見直し、発生届け出を自治体の判断で高齢者らに限定できるようにする方針を表明したことについて、長崎県内の医療関係者からは歓迎する声が聞かれる一方、保健所などからは届け出がない陽性者のフォローなど運用上の課題への指摘もあった。
 県医師会の森崎正幸会長は「保健所に届け出を出すだけでも大変な負担。その作業に時間を取られていた医師が治療や検査により専念できるようになるためメリットは大きい」と歓迎する。一方、発熱外来に応じている本田内科医院(長崎市)の本田孝也医師は「全数把握見直しは評価するが、焼け石に水。感染者が増え過ぎている。感染抑制のため行動制限をしなければ根本的な解決にはならない」と指摘。症状が重い高齢者の入院先が見つからず、1日点滴を打って自宅療養とせざるを得ないケースもあったという。
 「全数把握の目的が感染拡大防止であることを考えると、陽性者が大幅に増加した前回の第6波の時点で目的達成が困難になっており止めてよかった」と話すのは県央保健所の藤田利枝所長。自治体の判断で発生届け出を高齢者らに限定できるとした点についても「届け出がない陽性者を感染しているという裏付けがないまま、保健所が医療機関につながなければならないケースが出てくる」と懸念。さらに「全数把握を見直しても、診療・検査医療機関や入院受け入れ病院しか診られない状態が続けば、ちぐはぐな対応と言わざるを得ない。どの医療機関でも対応できるようにすべきだ」と求めた。
 佐世保市新型コロナウイルス感染症特別対策室の小田寛司室長は「現在は全感染者の健康状態を保健所がケアしているが、必ずしもすべてをケアする必要はないという判断を一自治体がするのは困難。患者の生命が脅かされることはあってはならず、県と対応を協議したい」と述べた。
 大石賢吾知事は「発生届に代わる感染者数の把握などに課題があり、国の通知を詳細に確認した上で、関係者の意見をしっかり聞き対応を検討したい」との談話を出した。


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