シボレー・コルベットC8.R、初のWEC富士へ「ユニークなコース。4日間シミュレーターをやった」

 WEC世界耐久選手権のLMGTEプロクラスにコルベット・レーシングの64号車シボレー・コルベットC8.Rで参戦しているニック・タンディは、先の第4戦モンツァでのクラス優勝を「チームが必要としていたものだった」と述べ、来る第5戦富士ではモンツァの再現を目指すものの、チームとマシンにとって初めてのサーキットであることから「最もタフなチャレンジ」になると展望を語っている。

 7月の第4戦モンツァ6時間レースで64号車のタンディは集中的な燃費走行を行い、フィニッシュ直前でライバルのAFコルセ52号車フェラーリ488 GTE Evoが燃料スプラッシュのためのピットに向かったことにより、彼とトミー・ミルナーは今季初勝利を挙げていた。

 コルベット・レーシングは、2台体制で挑んだ6月の第3戦ル・マン24時間レースにおいて、12年ぶりのダブルリタイアを喫しており、1台でフルシーズン参戦する64号車のコンビもチャンピオンシップのランキングを大きく後退させていた。

 9月に開催される第5戦富士を前に、タンディとミルナーのコンビは、ランキング首位のAFコルセ51号車アレッサンドロ・ピエール・グイディ/ジェームス・カラドから30ポイント差をつけられている。

「僕らが勝つ番だったんだ」とモンツァ戦についてタンディは語っている。

「僕らはシーズンを通して良い走りをしてきた。だけど、さまざまな理由により、事がうまく運ばなかったんだ」

「モンツァではクリーンでいいレースができたが、勝つための根本的なペースは掴めなかった。ところがレース終盤には戦略面がうまくいき、物事は僕らの思いどおりになったんだ」

「このような結果になって嬉しいよ。シーズンを通して、純粋なパフォーマンスと、僕らが実行してきたことをベースに考えれば、僕らは一度も足を踏み外したことはない」

「さまざまな外的要因により結果が出ず、チャンピオンシップで大きく順位を落としてしまった。とくにル・マンでは心を痛めた後だったから、モンツァでの勝利はチームにとってまさに必要なものだったんだ」

「この半年間、みんな懸命に働いてきたのだから、このチャンピオンシップで成功することがどういうことなのか、シーズンの最後に分かるだろう。僕らにはこの勝利が必要だったんだ」

2022年WEC第4戦モンツァ LMGTEプロを制した64号車シボレー・コルベットC8.Rのニック・タンディとトミー・ミルナー

■100Rは「世界中でも、最も情熱を傾けて取り組むべきセクションのひとつ」

 コルベット・レーシングは、9月9〜11日に日本の富士スピードウェイで開催される第5戦で、モンツァの再現を目指す。だが、ミルナーは前戦の成功が長続きすることに保証はないと指摘する。富士はプラット&ミラーが運営するチームにとっても、そしてC8.Rにとっても、未経験のサーキットとなるからだ。

「モンツァで勝ったからと言って、それが連勝や好調を保証するものではない」とミルナーは言う。

「このクルマから可能な限り競争力を発揮できるよう、努力しなければならない」

「自分自身に集中することは、パッケージから最大限の力を引き出すための最良の戦略だ。自分たちに何か与えられたと思うのはいいことだが、クルマをあるべき位置に持っていくために、僕らはいい仕事をするだけだ」

「富士は4日間、シミュレーターで走った。これまでかなりの作業をこなしてきた。とてもクールなサーキットだ。多くの場所で本当にスピードが速いんだ。コーナリング時間が長いターンが多いという点で、ある意味ユニークなサーキットだ。クルマのバランスとタイヤのライフがとても重要になる」

「シミュレーターは、これまで試したことのないようなセットアップを試すチャンスでもある。シミュレーターで事前にコースを走れるのはいいことだ。コースに行き、クルマに乗ってすぐに走り出すことができるから、大きな助けになるんだ」

 タンディは、16のコーナーを持つ4.5kmの富士のレイアウトにおける“異なる特性”をマネジメントするために、適切なカーバランスを手にすることの重要性を強調している。

 GTEプロクラスでは唯一の1台エントリーチームであるコルベットのタンディは、日本でのレースは「最もタフな挑戦」のひとつになると予想している。

「富士はF1タイプのサーキットで、路面はかなりスムースだ。フラットなエリアが多い」と彼は言う。

「でも、セットアップの哲学については、最善の方法を知るのが難しいトラックでもある。直線スピードが必要となる長大なホームストレートがある一方で、ハイダウンフォース(が必要な)コーナーがいくつかあるんだ」

「ターン3の先には長い右コーナー(グリーンファイト100R)があり、ここは世界中のレーストラックの中でも最も速く、最も情熱を傾けて取り組むべきセクションのひとつだ。ストレートで速く走るためにドラッグを削るのは当然だが、このあたりでのダウンフォースを犠牲にするわけにはいかない」

「最終セクターとホームストレートで前のマシンに近づくことができれば、スリップストリームの効果でいいレースができる」

「僕はまだ2回しか、富士に行ったことがない(2015年にKCMG、2017年にポルシェで出場)。個人的には、最も経験値が低いサーキットだ」

「サーキットが初めてということで、チームとして最もタフなチャレンジのひとつになると思う」

ガレージに入れられる63号車シボレー・コルベットC8.R(2022年ル・マン24時間)

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