行き合いの季節

 「行(ゆ)き合いの空」とは季節の変わり目、とりわけ夏から秋に移り変わる頃の空をいうらしい。今年は23日だったが、「夏がやむ」とされる「処暑」の頃を境に、心なしか肌を焼くような日差しがやや弱まったように思える▲行き合い、つまり季節と季節の「出会い」を感じさせるが、時の移ろいなんかを感じてる場合かよ-と、気ぜわしい子ども、若い人も数多くいるだろう。夏休みも終わりに近づき、宿題との格闘の頃でもある▲かつて本紙の「きょうの一句」に載った、伊藤万凜(まりん)さんの作。〈机上には宿題うちわマンガ本〉。すべきことは分かっていても、漫画という誘惑が横にある▲同じく、稲葉純二さんの作。〈夏休みのんきな俺にせかす俺〉。宿題を前に、2人の俺がいる。今はとうに大人のはずだが、お2人がそれぞれ中学生、高校生の頃の一句で、今でも晩夏のにおいがする、記憶のひとこまだろう▲自由研究に読書感想文にと、時には親の手や知恵を拝借しての「焦りの季節」だが、人によっては「気の沈む季節」でもある。新学期を前にして「登校」の文字に不安をかき立てられる子どもも多い▲無理に登校しない。別の居場所や“心の逃げ場”を見つける。方法ならばある。どうか、少しばかり心安らぐ何か、どこかとの「行き合い」があることを。(徹)

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