栃木県内、中核病院でクラスター 病床ない開業医に救急患者搬送も

佐野医師会病院でコロナ病床の開設準備に当たる関係者=25日午後、佐野市植上町

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、栃木県内の中核病院で院内感染が相次ぎ、地域の救急体制に支障が広がっている。佐野市では重症者を受け入れる唯一の2次救急病院である佐野厚生総合病院(同市堀米町)でクラスター(感染者集団)が発生。救急搬送の受け入れが大幅に制限され、救急患者が病床のない開業医にまで運び込まれる事態となっている。

 「佐野は既に医療崩壊している。救急車が適正に利用されないと、救える命が救えなくなる」。佐野市葛生東1丁目にある長島医院の長島徹(ながしまとおる)院長(61)は、危機感をにじませた。

 8月中旬、同市内の救急搬送の7~8割を受け入れる佐野厚生総合病院の2病棟でクラスターが発生。濃厚接触なども含め約40人が休職し、現在はかかりつけ患者以外は受け入れを見送っている。

 このため同市では救急搬送先が見つからないケースが相次ぎ、入院用の病床を持たない長島医院も9日以降、コロナ患者や熱中症の搬送受け入れに5件対応した。通報から1時間以上たって運ばれるケースばかりという。

 救急体制の逼迫(ひっぱく)を受け、佐野市医師会は会員にアンケートを配り、救急搬送の受け入れが可能かどうかを調べ始めた。一覧にして行政や消防と共有し、救急車の到着から搬送までのタイムラグの短縮を図る。同会が運営する佐野医師会病院(佐野市植上町)で、休止中の病床の再開準備にも乗り出した。

 県によると7月以降、県内の医療機関ではクラスターが26件発生。下野新聞社の調べでは2次救急を担う県内28病院のうち、7病院がホームページ上で公表。新規入院の受け入れ停止や診療科目の一部制限に追い込まれている。

 南那須地区で2次救急を唯一受け入れる那須南病院(那須烏山市中央3丁目)も今月初旬、地元の「山あげ祭」集団感染の影響で、救急外来を制限した。ただ消防から「搬送先がなくなる」と悲鳴が上がり、何とか調整してすぐに体制を戻したという。

佐野医師会病院で、コロナ病床の開設準備に当たる関係者=25日午後、佐野市植上町

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